今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

イノベーション社長

(写真:ディープインパクト?)

■「経営学」の言葉

宅配便を考案したヤマト運輸、小倉昌男社長の言葉。
「サービスが先、利益は後」
しかし、その後にこうも続ける。
「もちろん、一社員がこんなことを言って許されるはずがない。だから、経営者が言っているのだ」
小倉昌男社長の名著「経営学」には、宅配便黎明期にヤマト運輸がいかに苦労して事業を拡大してきたかが書かれている。
宅配便は、運送事業の概念を変える大イノベーションだった。小倉社長は、今までの運送事業と、宅配便の違いを分かりやすく例えている。
それまでの運送事業は、豆の一杯詰まったマスを決まった場所から、目的地に動かす仕事だった。
しかし、宅配便は、そもそも仕事の出発点から違う。一面にばら撒かれた豆を一つ一つ拾い集めつマスに入れる。それを目的地に動かした後、また個別の場所に撒いて回る。
今ではすっかり慣れて、当たり前に思っているが、それを効率良く、かつ利益がでるように仕組みを作り上げるまで、どんなにたいへんだったろうと思う。

■社長だから言えること

「サービスが先、利益は後」
ヤマト運輸は、商品開発力でも突出している。
鮮魚の宅配を可能にした「クール宅急便」とか、ゴルフやスキーに手ぶらで行って帰れるようにした「ゴルフ・スキー宅急便」とか。
それは、宅急便を利用した顧客の声に向き合って、一つ一つ実現する中から生まれた。
しかし、これはなかなか出来ることではない。
事業には、今収益を支えているコアな商材があり、そこから離れてサービスを提供すると採算割れを起こす。
サービスを向上させれば、顧客満足を上げることができる。しかし、過剰にサービスを行うと収支は悪化する。
そこに、「儲かろうが、儲かるまいが、お客さんが喜ぶことをすべきです」と一社員が言い出そうものなら、どうなるか。
上司に呼び出され、キツイ説教を喰らうことは目に見えている。
故に、「サービスが先、利益は後」がどんなに凄い言葉かが分かる。しかし、それを業績の安定のために、一番利益確保を優先しがちな経営者が言ってしまうところが、また凄い。
かくて、経営者の後押しを得た社員は嬉々としてサービスの向上に努めたに違いない。
それは、顧客目線で個別の荷物を一つずつ拾い集めることに挑戦した、ヤマト運輸ならではの企業文化とも言える。

■道楽と言い切る凄さ

別の社長は、収益を度外視して、新しい事業領域に挑戦することを「社長の道楽」と言い切っていた。
チームを編成し、資金をつぎ込んで、次の収益モデルを探す。あるいは、基礎研究をする。
かつてのNHKドラマ「マッサン」では、日本に初めてウィスキーの醸造工場を作ろうとした主人公が、銀行や役員にさんざん叩かれるシーンがある。
「なんやて、準備、工場建設に2年。それから、ウィスキーを寝かせて、売り物になるまでまた5年。その間、ずっと赤字を垂れ流せと言うんか。」
新しい事業を展開する時には、どうしても雌伏の期間が必要になる。そして、それを会社が認めなければ、研究開発に着手できない。
ましてや、大勢の食い扶持を稼がねばならない大企業ほど、収益の見えないノル・ソルの取り組みは理解されない。かくて、大手ではイノベーションは起こりにくいと言われる。
だから、その研究開発を社長の肝いりで始める。そして、社長自身「道楽だから、好きにやらせてくれ」と言い切る。
凄い社長である。

■イノベーション社長

イノベーションには、トップの理解が必要である。
だが、トップに後押しされても、受ける我々が その意識に同調できなければ、やはり結果には結びつかない。
「なんでも、良いと思ったことは、どんどんやれ。」
「何でもですか?何でもって何ですか?」
「自分のやりたいことだ。」
やりたいこと・・・やりたいことは、家に帰って、テレビでも見ながら寝ておりたいのが本音。
社長の言うやりたいこととは、ちゃんと、差別化が出来て、収益も確保できて、さらに世の中の役に立つやりたいことなのだ。
だから、たいへん戸惑う。
社長が言外ににじませている事業への思いをキチンと酌み取らねばならない。
そのために、「何でもやりたいこと」に辿り着くには、自分なりに相応の勉強量と、意思が必要なのだ。
未来への事業を開くために、「利益度外視」「道楽」が言われる。しかしその分、我々もある程度突き抜けている必要がある。目指すところが大きな分、努力も相応でなければならないと言うことか。
しかし、社長がイノベーションを志向する以上、我々にもその心意気に感じて、相応の努力が必要だろう。