今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

最後に理解してもらえればそれでいい

(写真:百花通り)

《駅馬車》

昔のアメリカの西部開拓時代。
当時は、未開の荒野を駅馬車に乗って、街から街へ移動していました。

その駅馬車に乗り合わせた人たちがヒソヒソ話を交わしています。
「最近、この当りで駅馬車が強盗に襲われたそうだ。」
当時のこと、警察組織もなく、武装と言えば駅馬車に積んだ数丁のライフルばかりがたのみでした。しかし、徒党を組んで襲ってくる強盗団には歯が立たたず、むしろ、下手に抵抗すれば命まで取られかねません。荒野では強盗団にはされるがままでした。

その駅馬車に一人の労働者らしき若者が乗り合わせていました。
「強盗ですか!なんてことだ。どうしよう。」
「どうされたのですか。」
隣の裕福そうな紳士が尋ねます。
「実は、私は前の街で一年間出稼ぎをして給金の1万ドルを持って帰るところなのです。もし、そのお金を強盗に奪われたら、とても生きてはいけません。」
「そうですか。それは心配でしょう。ならば、私に良い考えがあります。」
「本当ですか。」
「はい、そのお金を靴底に隠すのです。そうすれば、強盗もまさか靴底までは調べないでしょう。」
「あ、有難うございます。」
早速、若者は紳士の言う通り、大金を靴底に隠しました。

しばらく駅馬車が進んだ時、後ろから一馬の蹄の音と数発の銃声が追いかけてきました。
噂の強盗団が現れたのです。
強盗団は、駅馬車を止めると、乱暴に中に乗り込んできました。
そして、乗客たちに銃を突きつけると、金品の物色を始めたのです。

すると、その時です。あの若者にアドバイスした紳士が突然叫びました。
「この男は、靴底に大金を隠しているぞ!」
早速、その言葉を聞いた強盗たちが調べてみると、驚愕する若者の靴底には果たして1万ドルもの大金が隠されていました。
そして、思わぬ成果に大喜びした強盗たちは、後はろくに調べもせずに早々に引き上げていったのです。

《紳士の真意》

「よくも、裏切ったな!あんたは最低の人間だ!」
命より大切なお金を取られておさまりがつかない若者は紳士に迫ります。
周りもそれに同調して、「そうだ、そうだ。」「謝れ!」「弁償してやれ!!」と罵ります。
しかし、紳士は弁解をする訳でなく、「申し訳ない。あと少し待ってください。きちんと説明しますから。」と繰り返すばかりでした。

やがて、駅馬車は次の街に着き、乗客たちに安堵の色が広がりました。
しかし、気持ちが収まらない若者は、ついに紳士に飛び掛かろうとします。
「まず、待ってください。これには、訳があるのです。」
そう紳士は若者を宥めながら、2万ドルの大金を手渡しました。
そして、驚く若者に事の顛末を語って聞かせました。

「実は、私は10万ドルもの大金を所持していたのです。そこで、貴方にはまことに気の毒でしたが、強盗たちに1万ドルの在り処を教えたのです。そして、私の10万ドルは盗られずに済んだ。これは、ほんのお礼の気持ちです。」
紳士の真意を知らされた若者は、深く反省し、それまでの非礼を詫びたと言います。

《深謀は理解し難し》

深く考え、先まで見通した時に、皆んなが常識と考えていることの反対を実行しなければならないことがあります。
そして、説明をして理解を求めても、理解を得られないこともあります。嘲り笑われたり、罵られるかも知れません。

確かに、上手く行っている時は、皆んなに同調して動けば良いでしょうが、予測できる危機があり、しかもそれに誰も気づいていない時には、先を見通して手を打つ必要があります。幾つものプロセスを経て、最後には辻褄が合って目標に到達するとしても、その間真逆のプロセスを通ったり、一時的に縮むことが必要です。そして、その時に周りから非難されたり、否定されることもあります。

ある会社では、顧客満足を120パーセントまで高めるために、大きな開発投資を行いました。
そして、そのために一時上場を廃止までしたのです。おそらく、株主や役員、社員の何割かは反対したでしょう。
しかし、「伸びる前には縮まねばならぬ」と周りを説得し、意思を通した社長は凄いと思います。

先を見通すことなく、ただ目の前の人たちと同調して時間を無駄にするより、先のために深く謀って、真逆のことをする。そして、そのために周りから受ける非難も敢えて受け入れる。
そんな覚悟が必要な時もあります。