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今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

成長とは、考え方×情熱×能力#52

(写真:夕暮れの波動)

婿取り

「い、っ・・・たああ、安希子さん、い、いたあい。」

「も、もう少しです。お嬢さあまあ。うう・・・ん。」

「くっ・・・、ううう。」

「はあ、ふう。お嬢様、かなりお太りになったんじゃありません?」

「は、はあ、そんなはずないです。むしろ昔よりやつれたって言うか・・・うっ・・・。」

「でも、中にはストレスで太るタイプもいますからね・・・!」

「て、言うか、安希子さん、なんでこんなにウェストを締め付ける必要があるんですか?」

「そりゃ、今日はお嬢様の昔のご学友もたくさん来られますし、中には一流大学で学んでいる殿方もおられるではないですか。
ここは一つ歌陽子お嬢様が頑張って優秀な殿御のハートを射止めて貰わなければ、せっかくの旦那様のご苦労が報われません。」

「ちょっと待ってください。話が飛躍し過ぎです。今日は私の21回目のバースデーを祝って友達が集まるだけですよ。なぜ、殿御とか、ハートを射止めるとか、お父様の苦労が報われないとか言う話になるんです?」

「ですね、失礼しました。ならば、お嬢様の頭でもきちんと分かるように話をします。」

会話の舞台は東大寺家。明けて1月6日は歌陽子の21回目の誕生日であった。
そして、会話の主は歌陽子と、毒舌ハウスキーパーの安希子だった。
安希子は、歌陽子のパーティ用のドレスの着付けを手伝っていた。安希子はなんとか歌陽子のウェストを少しでも細く見せようと必要以上にギュウギュウとコルセットを締め上げ、また歌陽子はそれに耐えかねて悲鳴を上げていた。

「だいたいお嬢様の体型は子供っぽいんです。もう少し出るところが出てれば良いのに、せめてウェストくらい締めなければメリハリがつかないじゃありませんか。」

「う・・・、それまるで私が幼児体型みたいに聞こえるじゃないですか。」

「みたいじゃなくて、実際にそうなんです。よし!あ、もう少し、胸を寄せようかしら。」

「あ、ちょっと、やめて!潰れます。い、痛い!」

「あと少し我慢です。これでよし!」

「はあ、う・・・・っ、どうして私、そんなに大人っぽく見せなきゃならないんですか?」

「それは、お嬢様がもっと女の魅力をだせば、優秀なDNAを呼び込めるじゃありませんか。」

「優秀なDNAって、そこまで露骨に言わなくても・・・。」

「だって、ですよ。お嬢様、もう21じゃないですか。昔ならとっくに行き遅れですよ。少しは焦らなくてどうするんですか?」

「そんな、人生40年時代と比べないでください。それに、私は私でちゃんとしますから大丈夫です。」

「いいえ、分かっていないのはお嬢様の方です。お嬢様はご自身のことだけを考えていては駄目です。立派な殿方と結ばれ、ゆくゆくは東大寺家を背負って貰わねばなりません。」

「だって、跡継ぎなら宙がいるじゃない。」

「宙お坊っちゃまは、確かに頭はいいかも知れませんが、あれでは将来が案じられます。いずれにしろ、歌陽子お嬢様の旦那様にもしっかり支えて貰わなくてはなりません。」

「つまり、こう言うことね。私のバースデーに集まった昔の学友から、優秀な男子を見つけて、はやく婿取りをしろって言いたいのね。でも・・・。」

「はい?」

「それって、いつもお母様がこぼしていることじゃありません?」

「ん・・・その、それもありますけど。」

「安希子さんには、お母様の言うことは絶対ですもんね。分かりやすいなあ。」

「ムッ・・・。」

「あ、怒った?」

少し気になって、安希子の顔を覗き込む歌陽子。

「あの、私と奥様では、意見が違うところもあります。それは、いくらお嬢様が優秀なDNAを引き込んだとしても・・・。」

「な、何ですか?」

「お嬢様の血で薄まってしまえば何の意味もありません。」

(そう、来るかあ。)

(#53に続く)