今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

成長とは、考え方×情熱×能力#3

(写真:風渡る空)

始動

「ロボットコンテスト?あの、よく工業高校でやっているアレですか?」

テレビでの聞きかじりで歌陽子(かよこ)は前田町に聞き返した。

「似たようなもんだが、あんなに大掛かりじゃねえ。うちの会社の中で、30歳以下の若手がエントリーして、新作ロボットのアイディアを披露するのさ。毎年、いっぺんずつあるんだが、あんた知らねえか?」

しばらく記憶を探るような顔をしていた歌陽子だったが、少しバツが悪そうに頭を掻いて言った。

「すいません。開発部のミーティングでも聞いたことがありません。」

「はあ、やっぱり、最近は参加者もいなくなってすっかり盛り下がってやがるからな。
だけどよ、一応社長も審査員で参加するんだぜ。」

「だけど・・・あ、そうか。ロボットコンテストなら、社長に直接プレゼンできますよね!」

「そうよ、それが肝心なところよ。」

「でも、開発部のミーティングでも話題に上がらないくらいだから、今年は開催されないってことにならないかしら。」

「まあ、あるかも知れねえな。だけど、そこだけは親父さんの力を借りるのも手だぜ。」

「え?父ですか?」

「ああ、今年のロボットコンテストに、もし親父さんが顔を出すって言ったらどうなる?
ロポティックスとか言い出している手前もあるし、親父さんが顔を見せても何の不思議もねえ。
そうしたら、うちも東大寺に対するメンツもあるから、強制的に各部から参加者を募ってでも盛り上げようとするだろうぜ。
そこで、審査員から最優秀賞を貰えば、長いプレゼンをさせて貰える。そして、それが社長に響けば、開発予算を貰って正式に社内プロジェクトの一つに加えて貰えるんたぜ。
とうでえ、願ったりかなったりだろ?」

少し道が拓けてきたので、歌陽子の顔は見る見る明るくなった。

「は、はい!頑張ります!」

しかし、そんな歌陽子に水をかけたのはまたしても野田平だった。

「は、頑張るって何をだよ?」

「え、そのロボットコンテスト、優勝・・・です。」

「待てよ。ロボットの配線一つできないお前がどうやって参加するんだよ。コンテストには実機がいるんだぞ。」

「え?そうなんですか?」

「タリメーだろ。まさか、鉄腕アトムのイラストでも描いて誤魔化すつもりだったのかよ。」

「そ、それはそうですけど・・・。」

歌陽子をいじめて喜ぶのは野田平の趣味のようなものである。そして、いつも助け船を出すのはら決まって日登美だった。

「歌陽子さん、安心していいですよ。エントリーは若手が中心ですが、企画さえすれば実機製作はチームでやって良いことになっているんですから。」

「チーム?」

「つまり、僕らですよ。」

「あ!」

「おうよ、俺らエースエンジニアが三人もついてるんだ。社内の表六玉なんぞに負ける気がしねえぜ。」

「まあ、そう言うこった。からかって悪かったな。」

「もう!ひどい!ノダチン!」

「ノ、ノダチンだあ?おめえ、ちょっと図に乗り過ぎだぜ。」

いや、それくらい歌陽子の気持ちは舞い上がっていた。
こんなに心強い味方は他にない。

「じゃあよう。グズカヨ!」

「え?私?」

「そうだ、グズカヨ。おめえ、早速パパに、ロボコンに来るように頼みな。」

そっか、それがあったか。

「い、いやあ、私からはち、ちょっと。」

「まあ、そうだろうぜ。あの気取ったムラなんとかに頼んだ方が無難だろうな。」

さすが、前田町さん。よく分かってる。

「嬢ちゃん、あの村方って野郎に早速電話しな。」

「い、今ですか?あのまた、ヘリとか飛ばされませんか?」

「でえじょうぶだ、ヤツもそこまで人間が悪くはねえ。」

「はい。分かりました。」

トゥルルルルルルル!
ガチャ。

「あの、歌陽子です。村方さん。今いいですか?実はご相談がありまして。
・・・
そうです。自立駆動型介護ロボットのことです。はい、実はですね、いろいろと考えたんですけれど、社長と直接話をする良い方法がなかなか思いつかなくて・・・。
・・・
い、いいえ。いいです!ちゃんと私なりに考えましたから。実はですね、うちの会社にロボットコンテストという催しものがありまして・・・。
・・・
そうです。そこで、介護ロボットの試作品を出展して、優勝して・・・社長にプレゼンして・・・、はい。東大寺グループのバックアップもありますから、なんとからやらせてくださいって、言います。
・・・
え?はい。そうです。
でも、大丈夫です。私には最強のチームがついています。社長を絶対納得させます。
難しいのは分かっています。でも、それ以上に価値があることですから。
・・・
はい。
・・・
はい。
それで、お父様にロボットコンテストの日に参加して貰いたいんです。
そこをなんとか村方さんに・・・。
・・・
え?無理です。
そこは協力してください。
だってヘリコプターを飛ばしてさんざん困らせたじゃないですか?
・・・
そうです。だから、村方さんは私に協力する義務があります。
・・・
はい。もちろんです。あと、私が頼んだって分からないようにお願いします。
・・・
はい、よろしくお願いします。ありがとうございます。
では失礼します。」

ガチャ。

「おい、最後は無理やりだったじゃねえか。大丈夫か?」

「大丈夫です。なにしろ、私は村方さんの一番のお気に入りなんですから?」

「は!いいやがる。」

そこで、最後に前田町が話を引き取った。

「じゃあ、策はなったところで、ロボットのコンセプトを固めようじゃねえか。」

(#4に続く)