今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

山や川を恨む人間はいない

(写真:ヤンマ その3)

電車の中で

「ああ、腹立つわ。」

「どないしたん?」

「あのな、うちの亭主、めちゃムカつくねん。昨日な、メチャメチャ忙しかったんや。
それで、頑張って片付けたら夕方な、えらい眠うなって、ちょっと炬燵のところでとろとろしとったんや。そうしたら、うちのが『女はうちでのんびりしとれてエエナア』いうんやで。
誰がのんびりしとるちゅうやねん。
家におるときは、みんなうちにやらせてダラダラしとるのは、どっちやねん。」

「あ、それは良うないなあ。」

「せやろ、ひどいもんやで。ほんまにうちおん出たろか。」

「まあ、まあ、まだ子供も小さいんやし。」

「せやけど、腹が立つっちゅうねん。」

犯人はどこか?

ガクン!

「あ、電車止まったで。」

「そやな、どうしたんやろ?」

アナウンス

「電車をご利用中の皆様にご案内します。この先の踏切で自動車と列車の接触事故がありました。現在のところ、まだ復旧の目処が立っておりません。皆様、お急ぎのところまことに申し訳ありませんが、しばらくお待ちいただきますようお願い致します。」

「え!ほんまかいな。敵わんわ、急いどるのに。」

「でも、しょうがないやろ。こんなところなんやし。しばらく、待ってみいへん。」

「せやな、しゃあないわな。◯鉄が悪いわけちゃうし。」

・・・

一時間後。

「あかん、うちは限界や。車掌はどこや?文句言ったる!責任者、出てこんかい!」

山や川を恨む人間はいない

「ちょっと、落ち着いてえな。みんな、めっちゃ見とるやん。そないに、何でも人のせいにしたら、あかんよ。」

「せやかて、うちのせいやないやん。」

「じゃあ、誰のせいなん?」

「そら、電車にぶつかっていったドライバーか、車をようよけなんだ電車の運転手のせいやろ。なんで、そないにどんくさいもんらのために、うちがえらい目合わなならんねん、」

「ちょっと、どんくさいなんか言うたらあかん。どないしようもなかったかも知れへんやろ?」

「まあ、そらそう言うこともあるやろけどな。」

「あんたなあ、よう山歩き行くやろ。そしたら、途中で雨降りよるやん。そんとき、空に向かって怒るか?『バカヤロー!』言うて。」

「そら、そんなヤツおらへんわ。」

「じゃあ、山が高くてシンドイわ!とか、川がじゃあくさい、どっか行けとか言うか?」

「言うわけないやろ。言うたらアホやん。」

「じゃあ、山や川なら許せるのに、なんで◯鉄や、旦那さんは許せえへんの?」

「あ、そう言うたら、そやな。」

気持ちひとつ

「まあ、山や川はなんともならんけど、人間相手ならゴネたらなんとかなるかも知れんもんな。」

「山や川はそうやな。◯鉄相手なら、癇癪起こしたら少しは恐縮しよるもんな。うちは、それ見て憂さ晴らしをするっちゅうことやな。」

「そうやで、車掌さんもたいへんなんやから、気い悪いこと言ったらあかんよ。」

「せやな、うちの亭主にもそう思ったらええな。気い悪いこと言われても、あれは『カミナリが鳴っとるんや』くらいに思うたらええな。」

「主人が言うたら、うちら、どうしても自分のことに結びつけてしまうやんか。うちが悪いから言うてくるんやろか、とか、うちのこと嫌いやから酷いこと言うんやろか、とか。
知らんうちに、うちら自分で自分のこと責めとるんかもな。だから、余計傷ついて腹がたつんや。」

「そやそや、雨が降ろうが、山が高かろうが、川が流れとろうが、うちらとはなんも関係ないもんな。みんな、そう思ったらよろしいな。」

ガタン!

「あ!電車動きよったで。」

アナウンス

「皆様、たいへん長らくお待たせしました。踏切の事故処理が終わりましたので運転を再開いたします。」

「良かったなあ。」

「せやなあ、なんでも気い良うしとった方がよろしいな。」