今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

talk straight

(写真:桜町宵の口 その2)

直言居士

歯に絹着せぬ人。
思ったことを、ズバズバ口にする人。
もしも、自分が考えていることをそのまま口にしたら、それこそたいへんなことになります。
会社からも、家からも追い出されてたちまち路頭に迷うでしょう。
また、自分ができていないことを、さもしたり顔をして人には言いにくいものです。
「なら、お前はどうだ」と切り返されたら、たちまち絶句をしなければなりません。
しかし、それでも世の中には直言居士と言う人が居て、結構言いにくいことを平気で口にします。
言われたら、正直カチンと来ます。しかし、言っていることは至極真っ当なので、言い返そうにも、グッと飲み込まざるを得ません。
「クッソォ、いつかアラを探して言い返してやる」と思いますが、そう言う人は不思議と隙がありません。
人に言う以上は、自分が言われないように、自ら言動を正せる人だから直言居士も務まるのかも知れません。

腹に一物溜めない人

何でも思ったことを口にする人には近寄りがたいものです。しかし、本人は腹に一物を溜めないので、さぞやスッキリするだろうと思います。
歯に絹着せぬと言えば、よく古典の清少納言が引き合いに出されます。
「にくきもの 急ぐ事あるをりに、長言する客人。あなづらはしき人ならば、『後に』などいひても追ひやりつべけれども、さすがに心はづかしき人、いとにくし。」
現代語訳は、
「憎らしいのは、急いでいる時に来て、長話をする客人である。気安い人ならば、『後にして』と言って追い返せるのに、目上の人だったらそうはいかない。ああ、憎らしい。」
目上の人は、上役かも知れません。
彼や彼女が清少納言のこの枕草子のくだりを読んだら気を悪くしたでしょう。
それを堂々と後世に残る形で書き残しているのですから、清少納言もなかなかの直言居士です。
ウジウジ腹に一物溜めるより、パーッと発散してしまえる清少納言のようなタイプは実に羨ましい人です。

世渡り下手

もちろん、直言居士は楽なことばかりではありません。
人からは近寄りがたいと敬遠されますし、嫌われ、機会があればひどい目に合わせてやろうと狙う敵を作るかも知れません。
普通はそれが嫌さに、自ら言動を抑えるものです。でも、抑えた分は腹に溜まって、しこりのように気持ち悪い思いに苛まれます。
それが嫌だから、直言居士は溜め込まずにどんどん口に出すのです。
「あの人怖い」
そう言って、距離を保つ人も多いでしょう。
なぜなら、近くにいると何が口から飛び出してくるか分からないからです。
世間的には、世渡り下手かも知れません。
でも、思ったことをしっかり伝えられるのは、実はとても得難い力なのです。

talk straight

人間界の最大の苦しみは人間関係と言われます。
人間関係がこじれると、直接打ったり叩かれたりする訳でないのに、ひどく体調を崩す人もいます。
「嫌なことを言われる。嫌なことをされる。人として真っ当に扱って貰えない。」
嫌だ、腹が立つ。
居なくなって貰いたい。
そんな気持ちを抱えながらも、気力や立場で押さえ込まれて、不満を口にすることさえできません。そして、心に傷ばかり増えてしまいます。
そこには目に見えない磁場のようなものが発生していて、お互いの序列を暗黙のうちに決定しているかのようです。
でも、それは幻想であって、勇気ある一言で簡単に打ち破ることが可能です。
「やめてください。あなたに私をそのように扱う権利はこれっぽっちもありません。」
よく気の荒い上司が、若手社員の反撃に目をパチクリさせることがありますが、真っ当なことなら口にすれば良いのです。
しかし、そこでいろんなことを考え過ぎるから、怖くて口にできなくなります。
直言居士には、そんな計算はありません。
だから真っ当と信じれば、どんどん口にします。
それで損することもあるかも知れませんが、自分の心を人に縛らせない人間らしい生き方ですし、断じて間違ったことに染まらない正しい生き方です。
できれば、直言居士の如く生きたいと願いますが、やはり意気地は願って身につかないから難しいところです。