今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

人事を尽くす 〜人任せの部分を人任せにしないマネジメント〜

(写真:大天幕 〜夕刻〜)

■行き違い

作らせて下さいと頭を下げて頼むもんだから、じゃあ頼もうかとスタートする。
たくさん人が来て、「どうして欲しいですか?」と聞かれるので、日頃やっていることを一生懸命思い出して伝える。
「これで充分ですね?もう、他ないですね?」と慌ただしく期限を切られて、まあ、後は徐々に言えば良いかと、とりあえず要件定義書にハンをつく。
しばらく経って、向こうが出してきた提案書を見てビックリ。「ちょっとこれでは使えないよ。」
それで、もうちょっと何とかならない?と変更を依頼すると、相手も人が良いのか「分かりました」とあっさりと了承。ついつい、それで調子に乗って、押し込むこと2度、3度。
最初は、笑っていた担当者の笑顔も、最近はなんかぎごちない。
大丈夫かいなと思っていたら、開発が相当手戻りしているらしい。
しかも試作版を見た現場が、さらに変更を押し込むもんだから、かなりスケジュールが押して、ついに納期変更を打診してきた。
さて、肝心の製品と言えば、ありゃりゃ、いろいろ変えすぎて得体の知れないヌエのようになっているよ。
本当にこれちゃんと動くの?と心配になって聞くたび、「大丈夫です」「心配ありません」「なんとかします」を繰り返すから、敢えて不安を押し殺して信用したフリをする。
そうしたら、ついに業者がギブアップ。
えっ、じゃあ、今まで投入した時間はどうなるの?
そして今までの「大丈夫です」はどこへやら、急に態度を変えて「こうなったのは、あんた達が無茶ゆうせいだ」と逆ギレモード。
挙句はやった分、払うもんキチンと払って貰おうか、と凄まれる。
それで、それじゃあんまりだと拒絶すれば、偉い人が出てきて「訴訟も辞さない」と泥沼化。僕ら担当の手の届かないところで会社対会社で、何十億を払え、払わないで喧喧囂々。
挙句に、一体何べん生まれ変わったら払えるかって言うくらいの金額で痛み分けして、ホント一担当としては生きた心地がしない。

■トラブルは致し方ないか

よく大手ITベンダーの大型開発案件が火を吹いて不採算化する事例を聞きます。
中には、みずほ銀行のように訴訟にまで発展して、何十億を巡って訴訟しているのを聞くと、何のための開発だったのかと空恐ろしくなります。
その時、ユーザー側の担当者も生きた心地がしないだろうな、と想像したのが前段の文章です。
実際、不採算案件は酷いものです。せっかく営業が必死になってあの手この手で受注して、案件獲得の祝杯もいっとき、そこから開発の戦いが始まります。もちろん、お客さんに満足して貰いたい、喜んで貰いたいと使命感に燃えて始める訳ですが、現実はなかなか厳しいようで、現場の細かい要望をまとめきれず、時間と人手を底なしに食われるデスマーチが始まります。
これでは、顧客満足などと言っていられず、後はどこでどう被害を最小にしてオチをつけるか、負け戦さからの撤退ばかりが問題になります。
もちろん、開発会社の利益も、顧客の満足も達成されず、関わった担当者全員に辛い案件となります。
えっ、このコンピューターが行き渡った時代にそんなことあるの?と思われるかも知れませんが、少し前まで開発会社の利益を悪化させていた大きな原因となっていたので、あながち珍しい話ではありません。
「あ〜あ、また不採算か。」皆んな何だか諦めモードで、慣れっこになったりして。
でも、本当にトラブルは仕方ないのでしょうか。

■人任せを見直す

私の経験からすれば、多分に開発側とユーザーの意識に原因があります。
つまり、お互い自分の都合の良いように考えるからです。
開発側は、「とにかく書類を作って、認め印を押して貰えば良いだろう」と思います。だから、余り面倒臭いことになる前に、地雷原は避けてサラッと流す。もし、それでなんか言われも、「ハンコ押したじゃないですか」と突っぱねれば良いと安易に考える。でも、どんなに認めを貰っても、地雷原は確実に潰しておかないと、必ず後で爆発を起こして手がつけられないことになります。その時は、お金を貰っている手前、ハンコ押したじゃないかと抗弁しても押し切れるものではありません。
やはり、都合が悪くても、リスクの芽は早めにつまびらかにして、お客さんと一緒に潰すくらいでなくてはなりません。
そこは、「自分の業務に合うかは自己責任でちゃんとチェックしてくれよ」ではなく、進んでお客さんのためリスクコントロールするくらいで良いでしょう。

■責任のグレーゾーンを無くす

では、お客さん側からはどうでしょうか。
そこも、相手はプロだから、放っておいても良い提案をしてくれるだろう、と思っていたら失敗します。
別にベンダーを悪く言う訳ではありませんが、自分たちの都合の良いように、こちらの言うことを解釈していないとも限りません。
挙句に、「そこは言わなかったじゃないですか」となります。いや、そこは言わなくても当然でしょう、こんなことまで言わなきゃならないようじゃプロの価値ないじゃん、と言いたいところですが、いかに客の立場でごり押しできたとしても、正直疲れますし、相手に貸しを作るのも癪です。
ですから、発注側でも何度も自分たちの要望を棚卸しして、気になるところは面倒がらずにどんどん声を上げるべきだと思います。
つまり、これは責任のグレーゾーンの話です。
この手の話は、同じお客さんのオーダーで二者が協力してプロジェクトに当たる場合に起きがちです。しかし、見ていると、発注側であるお客さんとベンダーの間でも頻繁に見られます。
とかく私たちは、致し方ない状況を見つけると進んでそれに乗っかろうとするようです。
そこはお客さんの問題だとか、プロであるベンダーの責任だとか、協力会社が悪いとか、もっと言えば、あの案件が伸びたから数字が行かなかったと言い出す営業まで、言い訳ができる状況があるとそこで努力を止めてしまいます。
そして、その部分が責任のグレーゾーンとなり、そのままリスクとなりなります。
確かに責任のグレーゾーンは自分だけの責任では発生しませんが、ある程度想定できることならば主体的に動いてリスク回避したいものです。
自ら行動し、人事を尽くす。そうして、人任せにしないマネジメントが実現できます。