今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

アメリカの功罪

(写真:ジオラマ・セントレア)

■トランプの世界

ドナルド・トランプ、今戦われているアメリカ大統領予備選での、共和党の最有力候補です。
対する民主党の最有力候補は、ヒラリー・クリントン氏。
これで、もと大統領夫人と、不動産王の一騎打ちが濃厚になってきました。
さて、このトランプと言う男、その毒舌や過激な発言でアメリカ国内でも物議を醸しています。
とにかく、本来政治家には有るまじき人種差別発言はするわ、政敵のクリントン氏に対して性差別発言をするわ、隣国のメキシコとの国境に「万里の長城を築く」と発言するわ。
良識派の議員たちや市民団体は、『トランプを大統領にするな』とプロパガンダを展開しています。しかしその中、各州で勝利を収め、勢いはとどまるところを知りません。それは、今のアメリカに閉塞感を覚えている人たちが、トランプ氏に強力なリーダーシップを見出して熱烈に支持しているからです。
また、トランプ氏は、私たちの日本に対しても厳しいことを言っています。
「何故、俺たちが日本を守る義務があるんだ」とか、「アメリカ軍が駐留するのにかかる軍事費は、全て同盟国が負担すべきだ」とか。
「え?アメリカは、もう日本を守ってくれないの?」
それを聞いて、トランプが大統領になったらどうなるのか?と心配になった人も多いのではないでしょうか。

■良くも悪くも枠組みを作った国

アメリカは、良くも悪くも、今の世界の枠組みを作った国です。
世界の最富裕国にして、最大の軍事力をバックに自称「世界の警察官」。
冷戦後の世界で、問題を起こす「ならずもの」がいれば、わざわざ出かけて行って成敗をする、まるで水戸黄門のような国。
そのアメリカは、日本にとって、かつて最大の敵国でした。
しかし、国力の差を無視して戦いを挑んだ結果、日本の国土は文字通り焦土と化しました。
その後、無条件降伏をした日本に進駐軍が入り込んで、一から日本を作り直したのです。
国の最高法規である憲法はアメリカの指導のもとで作られ、民主主義思想や教育、文化が持ち込まれました。
敗戦国だった日本は、やがて主権を保証され、いつ間にかアメリカの軍事力の庇護のもと同盟国となります。
戦後の日本は、アメリカを抜きには語れません。そもそも平和憲法はGHQの草案ですし、武装放棄もアメリカの指導のもとで行われました。その後日本は、一度放棄した武力を警察予備隊、自衛隊と言う形で再配備します。全ては、同盟国の意向を汲んで、少しずつ国のあり方を変えて行ったのです。
それでも、戦後70年の間、日本は戦闘で一発の弾丸も打たない国でした。
それは、日本が平和憲法のもと、戦争放棄を貫いてきたからです。しかし、あくまでアメリカとの安全保障の傘の下の平和であり、またベトナム戦争の補給基地だった沖縄は当時世界最大の軍事基地だったため、他国が手を出せなかったと言う事情もあります。
その枠組みを私たち日本人はすっかり当たり前のものとして受け入れ、アメリカの軍事力の傘を前提にしかものが考えられなくなっています。
しかし、本当にトランプ大統領が誕生し、アメリカが日本から軍隊を撤収したら、その前提が崩れます。そしてまた、国民全体が過剰反応をして、おかしな方向にならねば良いが、と懸念されます。

■正義の正体

今、アメリカと中国は、互いに相手の覇権主義を批判しあっています。
あくまで専守防衛をうたいながら、世界のいたるところに戦略上有利な陣地を確保しようとする。そして、それを都合の悪い国が、相手国を「覇権主義国家」と批判します。
『人間は、強く平和を叫びながら悲惨な戦争をする』と言った人を知っています。
コソボにしろ、イラクにしろ、内部に問題を抱えていたのは間違いなくても、アメリカを中心とする多国籍軍の干渉で、より事態が泥沼化したのは周知の通りです。
つまるところ、大国は覇権を握り、自分の思う通りの世界を作ろうとする本性があります。太古からそれは変わりませんし、大航海時代や植民地時代、第一次世界大戦ではそれが色濃く出ていました。
しかし、世界大戦の反省から各国は協調の道を選び、身勝手な覇権主義国家は叩かれるようになりました。
その中、跳ねっ返りのドイツ、イタリア、日本の三国はファシズム国家として、世界を敵に回して戦争をしたのです。多額の倍賞で追い詰められたドイツは暴走し、日本は慣れない国際社会の中、右往左往している内に、すっかり悪役にされた感があります。
もちろん、三国の他国に与えた影響は看過できませんが、第二次世界大戦の戦勝国側にも手放しで正義を行使したと言えない側面があります。
要は、国家同士、ギリギリの欲と欲のぶつかり合いの中、強者と弱者に分かれ、追い詰められた弱者は跳ね返って叩き潰され、強者は正義の行使をうたう、それが実態ではなかったでしょうか。

■これからの世界

第二次大戦後、そのような覇権主義は表面的には、すっかりなりを潜めました。
そして、協調の時代と言われて随分経ちます。
それは、国際分業が進んで、自国だけでは産業が成り立たない世界になったからです。
どんな国でも、孤立したら生きては行けませんし、あからさまな覇権主義を表に出して集団で経済政策を受けたら大ごとです。
だから、「覇権」ではなく、「正義」や「安定」「平和」に言葉を変えているのです。そして、かつての覇権国家は、その維持のための、いわば自警団の親分になろうとします。
人間の欲丸出しの姿は、太古から、戦国時代、そしてこの協調の時代まで少しも変わらないことが分かります。
対して、我々は「平和」「協調」「正義」で世界が動いていると教育され、そのような歴史観を植え付けられています。しかし、それを手放しに信用しては本質を見誤るでしょう。
確かなことは、どんな正義の戦争にも、裏には必ず人間の都合や欲が絡んでいるのです。
無条件に正義や平和のための戦争はあり得ないのですが、悲しいかな、それが分かっていても自分や家族の命を守るためには敢えて武器を取らねばならないこともあります。
今のところ、地域紛争や小競り合いはあっても、大国同士はギリギリの均衡を保っています。その意味では、アメリカが主導した世界の枠は、なんとか機能していると言えるでしょう。
しかし、トランプ氏の発言のように、アメリカの政策いかんでは、どうなるか分からない脆さもあります。
その時に、慌てて過剰な反応をしたり、行き過ぎた軍国主義、好戦主義に陥らないように、今からよく議論を尽くすべきだと思います。