今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

テレビは何処へ行く

(写真:秋くれない その2)

■ニコ動テレビ

『ニコ動テレビ』と言う言葉がありました。
そこで、気になって検索エンジンに聞いてみたところ、あの「ニコニコ動画」をテレビで視聴する仕組みのようです。
詳しい説明はありませんでしたが、一つのテーマを決めて動画を視聴すると、あとは関連するテーマの動画を次から次とチョイスして勝手に配信します。
音楽BGMの自動配信サービスが有線放送なら、動画の自動配信が『ニコ動テレビ』。
いわばBGMの動画版と言ったところでしょうか。
私たちが家に居て、書きものをしたり、家事をしたり、大工仕事をしたりと、そんな時は耳が寂しいので音楽を聴いたり、ラジオを流している人が多いでしょう。
また、テレビをつけっぱなしにしてBGM代わりにしている人も多いと思います。
どうやら、その層を「ニコニコ動画」に取り込んでしまおうとしているようです。

■視聴者の漂流

対して、民放、公営のテレビ放送は、年々立ち位置を変えています。
テレビ放送が開始した当時は、テレビがあるのは余程のお金持ちでした。ですから、テレビを見ると言う体験は、今で言う映画館で映画を観るに近い特別感があったかも知れません。なにしろ、皆んな東京オリンピックの開会式や、力道山の試合が見たくて、近くの蕎麦屋や風呂屋に詰めかけたと言うんですから。
やがて、高度成長期と歩調を合わせて、テレビは家庭に普及していきます。そして、カラーテレビ。
若くない自分も、テレビと言えばカラーテレビの思い出がほとんどです。
ここまで来れば、家庭の主役はすっかりテレビで、「テレビばかり見ていないでサッサとご飯を食べなさい」とか「宿題を終わらせなさい」と怒られている子供たちが巷にあふれていました。
その後、一つのターニングポイントとなったのは家庭用ビデオデッキの登場です。
今まで、放送は流れている時間しか見ることができず、「あのドラマ見たいから早く帰りたい」と焦っていたのに、一度録画予約しておけば見たい時に見られる。もう時間に縛られなくなりました。

■スポンサーの漂流

しかし、これで困ったのはスポンサーでしょう。せっかく番組に高いお金を出して、ゴールデンタイムのCM枠を確保したのに、ビデオで視聴されたら、その一番見て欲しいCMの部分を早送りされるのですから。
それでも、サブリミナル効果くらいあったかも知れません。しかし、CMカット機能付きのデッキもありましたから、全くスポンサーからすれば「骨折り損の・・・」だったでしょう。
さて、さらに時代は下り、衛生放送、ケーブルテレビの時代。某国営放送の受信料を除けば、基本無料のテレビ視聴サービス、それを月何千円を払ってまで、他で見られない番組を見ようと言う流れです。
契約すれば、ドラマもアニメも映画も見放題。スポーツ専門チャンネルや、経済、ビジネス、果ては釣りや囲碁の専門チャンネルまであって、好きな人には堪らない・・・と思われましたが、やはり、リアルタイムな地上波放送と比べて、スピード感や刺激に欠けるので、テレビの視聴者の大半を侵食するとまでは行かなかったようです。
そこで、専用線を持っている強みを生かして、電話や地上デジタル波、インターネット回線まで丸ごと面倒を見ましょう、的なサービスで攻勢に出て、地域にそれなりの存在感を示しています。

■テレビの未来

そして、今はネット全盛時代。
今までは、ニュースは新聞、情報・エンターテイメントはラジオ、テレビと言う大きな器が担って来ました。
しかし、今は、新聞がネットのニュースに急速に地盤を奪われつつあります。
また、限られたコンテンツを一方的に配信するだけのテレビに対して、視聴者は自分が見たいものを見たい時に選択して見られるネット動画等に時間を使うようになりました。
おかしなもので、本来競合であるネット動画サービスをテレビの方が取り入れて、制作サイドが厳選したネット動画を放送する番組が高視聴率だと言うのです。分からないものです。
ただ、私から言わせると、動画と動画の間のタレントさんのコメントはむしろ煩わしく、早く次の動画を見せてくれよ、となります。
じゃあ、何故皆んな一斉にネットの動画に流れないのでしょう。
それについては、いろいろと理由が考えられます。
まず、ネットは自分で考えて検索しなければならない。その操作の手間や、検索センスみたいなものを要求されます。そこが面倒くさいですね。
また、YouTubeで関連動画を見ていくと、すぐにエロ・グロ・バイオレンスの迷宮に連れ込まれます。だから、なんとなくネット動画にはダークなイメージがあるのでしょう。
そして、やっぱりパソコンに向かってネット動画を一生懸命見ている姿は、まだ市民権を得ているとは言えない状況で、そう言う人に見られがちです。
そこをテレビがチョイスして、公共電波に乗せて見せてくれるので安心感もありますし、またクライマックスだけピックアップしてくれるので時間が儲かった感もあります。
また、操作しなくても、かけ流しで見ていれば楽しめるのが、やはり最大のメリットではないでしょうか。
そこに来て『ニコ動テレビ』です。
テレビのかけ流しの楽さと、嗜好に合わせて選択できるネットのメリットの融合です。
正直、家族皆んなで見るには、動画にR指定をかけてもらってエログロに走らないようにして貰わなくてはなりませんが、これが実現したら、いよいよ番組スポンサーも考えこんでしまうでしょう。
そうすると、制作費がますますかけられなくなり、テレビの相対的地位は下がっていくのではないでしょうか。
一部で実験的に行われているのは、ニコニコ動画とテレビ局との共同実験。
つまり、ニコニコ動画で流れるダンマクを、通常放送でもできるようにしたら、と言う試みです。
まさに、名実ともに『ニコ動テレビ』。
果たして、公器としてのテレビ、10年後はどうなっているでしょうか。