今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

やってみなはれ

(写真:科学館 たそがれ)

■鴨居の大将

以前、NHKの朝ドラで放映していた『マッサン』。
言わずと知れた、ニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝氏がモデルである。

ドラマにはもう一人、実在の創業社長がいる。
鴨居欣次郎のモデル、サントリーウィスキー創業者、鳥井信治郎氏である。
堤真一氏演ずる鴨居は、鴨居の大将として非常に癖はあるが、魅力的で小気味の良い人物に描かれている。

主人公のマッサンの少々奔放な事業提案にも、「おもろい!やってみなはれ!」と背中を押す。
堤氏の存在感のある演技に負うところも大きいと思うが、頻繁に飛び出す「やってみなはれ!」は、聞いていて実に小気味が良い。

■気持ちと気持ち

しかし、もし自分が「やってみなはれ!」の一言で、ポーンと背中を押されたらどうだろうか。
もちろん、無責任な放任主義ではない。
「金はだす。お前の熱意にかけるんや。」
鴨居の大将の男気がビンビン伝わってくる。
この気持ちに答えるには、こちらにも相応の熱意がいる。
鴨居の大将は、自分がリスクを負う代わりに、相手にも相応の覚悟と努力を求めているのだから。

マッサンは、そんな鴨居商店にあっても、かなり異色の人物だった。
ウィスキーは、熟成に時間がかかる。
と言うことは、最初に多額の経費がかかり、実際売りものになるのは何年も先である。
その間、ずっと経費を垂れ流すことになる。
しかも、日本人の嗜好を無視したマッサンこだわりのウィスキーは、発売からサッパリ売れなかった。
それでも、自説を曲げない頑固さ。醸造技術は突出していても、頭のネジが一本飛んだ人物に描かれていた。

ただ、熱かった。
そして、目的に向かって真っ直ぐに走る突進力もあった。
そんなエネルギーを持った人物だからこそ、鴨居の大将も「やってみなはれ!」が言えたのではないだろうか。

■やってみなはれ

経営者に金を出して貰う。
もちろん、ただでは出資してくれない。
出資の何倍にもして返すのが条件である。

そこで、はたと考えてしまう。
自分にそんな責任が担えるだろうか。
出資して貰って、もし上手くいかなかったらどうしよう。
自信がないから、危ないことは止めて、無難に言われたことだけをやっておこう。
あるいは、絶対大丈夫と言えるまで数字を固めよう。採算ラインが見えてから、起案しよう。
そうして、何も変わらないまま時間が経ってしまう。
確かに、お金の無駄遣いは避けられた。
しかし、最も大きな資産はロストした。
すなわち、時間と機会である。

今の時代、マッサンの頃に比べて圧倒的に有利になったことがある。
それは、何事に於いてもスモールスタートが可能になって、多額の経費がかかる前に方向を修正できる点である。
その意味では、周りから「やってみなはれ!」を言って貰い易い状況になっている。
にも関わらず、動きが鈍いのは、リスクを言い訳にした怠惰なのかも知れない。

自分たちは、先輩たちが切り開いてきた道をそのまま辿ることによって、ここまで来ることができた。
しかし、これから先は未知の領域である。
誰かが、そこを切り開いて進まなければ、後輩たちにバトンを渡せなくなる。
「やってみなはれ!」と背中を押して貰えるような熱い気持ちはあるか。
上手くいかなくても、人の所為にせず、やり抜く決意はあるか。
周りから、本気を評価して貰える働きができているか。
全ては、自分自身の胸に問いかけられているのである。