今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

平準化の罠

(写真:重戦車)

《怖い属人化》

事業者さんがコンピューターシステムの導入を検討する理由の一つに、仕事の属人化を避けたいというものがあります。

例えば、運送業の配車業務は、担当者のスキルによって、大きく会社の収益を左右します。
配送依頼のあった荷物の車両への割り振り一つにしても、車両の積載率を高め、効率的な引き取り、及び納入ができるコースを考えて、かつ特定の乗務員に負担がかからないように調整もしなければなりません。その車両や、現場にも特性があるので、それを頭に入れておかなくては適切な配車はできませんし、毎日起きる不測の事態や、交通障害、事故や荷主さんからのクレームにも対応しなければなりません。
この運送会社の配車マンと言われる人は、その他の管理業務も兼任していて、非常に高いスキルが求められる職種です。

しかし、スキルが求められる分、特定の個人に会社の業績が左右されることもあります。もし、その人が体調の都合等で長期休職することになれば、その間会社は混乱するでしょう。
この仕事の質が人によって左右される「属人化」は、経営者の方にとってはたいへんなリスクです。ですから、コンピューターシステムの力を借りて、ある程度のスキルを持った人なら均一に業務をこなせるような検討をするのです。
そして、これを平準化と言います。

《気がつけば最低限に合わせている平準化の怖さ》

平準化は、私たちIT業界でも言います。
例えば、提案書一つとっても、人によって差があっては困ります。そこで、慣れた人が作った提案書を雛形にして、後は一部だけを変えれば誰でもそれなりのものが作れるように準備します。
大手ITベンダーは、ものすごく手の込んだ提案書を短期間で作ってきますが、あれも社内の平準化の成果でしょうね。

しかし、この平準化は、諸刃の剣でもあります。
それは、どういうことか、理由を2つあげることができます。

まず、1つには、平準化にとらわれ過ぎると、スキルが低い人に合わせる傾向が出てしまいます。
よく「そのオペレーションはうちの会社では難しいんじゃないか?」と聞きます。
確かに、優れたオペレーションや、先進的な取り組みは、誰にでも出来る訳ではないし、属人化し易いのは事実です。だからと言って、それに取り組まないのは、会社として尖っている部分を削り落として、丸くなった部分のみを残すようなものです。
必然的に、ある一定のレベル以上にスキルを進化させるのは難しいでしょう。

すると、平準化で固められた会社は、当然、他の会社からも真似しやすいので、差別化の要因をどんどん失っていくことになります。ひいては、市場での競争力を失ってしまうでしょう。
これが、平準化のリスクの2つ目でしょう。

《高級フレンチかフランチャイズか》

このように、属人化と平準化には一様にリスクと弊害があります。また、その間で、まるで振り子のように右に左にと揺れ動いているようです。

しかし、この属人化と平準化については、私の中で一つの基準があります。それは、事業規模に応じて、ある程度決まってくるということです。

例えば、高級フレンチレストランとフランチャイズで考えればわかり易いと思います。
高級フレンチレストランは、まさに属人化の世界、シェフのスキルがそのまま看板です。後、他のメンバーは、必死でシェフを追いかけなくてはなりません。そこは、平準化より、個人的スキルの徹底的な研鑽が優先されます。
それは、何故か?
いかに高級フレンチといえど、相手にできるお客さんの数は限られ、必然的に経営のために客単価を上げざるを得ません。すると、高い単価を納得してもらうために、徹底的に差別化をせねばならず、結果的にスキルを磨きこまねばならないからです。

対して、フランチャイズのお店は、手軽さ、安さが売りです。それは、多店展開して、多くのお客さんを相手にするから薄利でも成立するからです。
そして、そこではスキル以上に、多くの従業員が効率的に、一定のサービスを提供できることが大切です。
そのために、平準化が優先されるのですが、その平準化された後のレベルも規模の大きさ故に高めることができます。

以上のように、属人化、平準化ともに、どちらも功罪があり、事業規模や業態に合わせて、適切に取り込むべきものだと分かるのです。