今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

リトル・ジャイアンツ


(写真:大曽根

ある時、営業さんから依頼を受けました。
「地元の大手事業者さんが、うちの商品を検討しているから打ち合わせに行ってきてくれ」と。
紹介してくれたのが、そのお客さんに出入りしている販売店さんで、まずはその事務所を訪問してから一緒にお客様先に入ることになりました。

指定された住所に行ってみると、さびれた電気屋みたいな店構えで、正直「えっ、ここ?大丈夫かな。」と思いました。
そして、「失礼します」と声をかけて中に入ると、出迎えてくれたのは自称「クマさん」という50才過ぎの社長さん。「なんで、こんなうらぶれたような店のオヤジさんが、あんな大手と付き合いがあるのか?」と思って話をうかがいましたが、聞くほどに、知るほどに、世の中にこんな人もいるのかと、感心することばかりでした。

まず、仕事に対するモチベーションがとても高い!「うちでは、事務の女の子にもマイクロソフトの公式資格を取らせています。」と普通ではないことを言われます。
お付き合いのあるところは、F社のような大手ベンダーで、わずか2人で乗り込んで徹夜でパソコン50台を納品して、設定までしてきたという武勇伝を披露してくれました。
その社長、開口一番「うちのメーリングリストに入ってください。」と今のSNSの友だち申請のようなことを手動でされています。
それでご縁があって、しばらく社長のメーリングリストにご厄介になっていましたが、どうやらこの社長、IT業者の癖にマイクロソフト嫌いのようで、さんざんMS社をこき下ろした連載を配信して貰って笑い転げた覚えがあります。

今はもう息子さんの代になってるようですが、未だに「技術力が高い」と言うと思い浮かべる会社です。
その時、つくづく会社の間口の広さや人数では技術力は測れないものだなと思い知らされました。
逆に大手ベンダーに出向いて説明を受けると、意外に自分の担当以外には暗いことに驚かされます。それは、少し質問の変化球を投げると途端にしどろもどろになる人がいるからです。
つまるところ、仕事は大手がやっても、小規模事業者さんがやっても、することの手順に変わりはなく、ただ少人数のところはひとりでなんでもこなさなくてはならないため、必然的にスーパーマルチな技術者が出来上がるようです。反対に大手は、仕事の内容でセクションが明確化しているので、専門には強いが、もっと言えば自社製品には強いが、「他のことはどうも」となっているようなのです。

以前、就職アドバイザーの記事を読んだことがありますが、大手の管理職ほど再就職に苦労すると書いていました。
大手の管理職をつとめていた人は、これだけの規模で勤まったんだからという自負があります。そして、中小の仕事など大したことないとタカを括っています。ところが、その中小にいるのは、少人数故にひとりで何でもこなしてきたスーパーマルチ人間です。全て組織運営の中で、仕組みとお膳立てが前提の大手の仕事術とは明らかに違います。
そこで、大手の管理職経験者はブライドが粉々に打ち砕かれると言います。

ついつい私たちは、会社の規模で社員の優秀さを測ろうとします。もちろん、大手に就職できて立派に勤まっているのですから優秀な人には違いありませんが、小規模事業者にもリトル・ジャイアンツが存在することを肝に銘じたいと思います。