今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

桜咲くまで

f:id:FairWinder:20150410231243j:plain
(写真:リトル・サンド・アーティスト)

『年ごとに 咲くや吉野の 山桜
木を割りて見よ 花のありかわ』

奈良県吉野山は、桜の名所で昔から有名です。今は、200種類、3万本もの山桜が密生していると言います。
しかし、その賑わいも春だけのことで、冬訪れてみると葉一枚つけない枯れ木のような桜の木があるばかりです。
昔ある人が、「この枯れ木から、春にあんなに桜が咲くとは信じられない。しかし、きっと木のどこかに桜の花びらを隠し持っているに違いない。」
そう考えて手頃な桜の木を切り倒して、細かくたち割りました。しかし、いくら探しても桜の花びら一枚なかったと言います。

昔のこと、しかも植物についての知識がなかったのでしょう。
桜の木は、冬の間、桜の花びらを隠し持っているわけではありません。しかし、桜の花を咲かせるためのエネルギーを蓄えているのです。それが春の陽気という縁に触れて、一斉に開花するのです。
そのエネルギーは、目には見えないので、いくら木を寸刻みにしても見つかるものではありません。

桜の木は、そのエネルギーをいつから準備するのでしょうか。
聞くところによれば、前の年の夏には桜の蕾に当たる部分を作り始めるそうです。厳しい冬の間も弛まずに花を咲かせるためのエネルギーを貯めます。
そして、春の陽気に触れて、一気に開花し、やがて散っていきます。

人間もこの習いではないかと思います。
何か大事を成し遂げようと思い立つことが、桜が夏に蕾を準備するのに当たります。そして、厳しい冬の寒風にさらされながら、ひたすらジッとエネルギーを蓄積するのです。
それは、夢や目標に向かって試行錯誤を繰り返す過程です。人脈を繋ぎ、技術を習得し、作っては否定されて壊し、また作ってはダメ出しを受ける。
ひょっとしたら、周りからは遊んでいるように見えるかも知れません。あるいは、全くダメダメの人に映れているかも知れません。
でも、一度喋らせれば結構深いことを口にする。それは、その間ずっと貯めてきたエネルギーがあるからです。

そして、条件という縁が揃った時に、一気に成果となって開花します。
枯れ木のような桜が次に行ってみたら満開になって驚かされるように、今までダメダメ君だと思っていた人が、もの凄い成果を上げて注目を集めます。
どうして、こんなことが出来たのか、周りはいぶかり二匹目のドジョウを求めるでしょう。でも、そのエネルギー充填はずっと目に見えない形で行われていたのです。簡単に真似はできません。

もちろん、その心に秘めた目標が大きいほど冬の期間は長くなります。
成功した開発者も、成果の出せない自分を長らく呪ったと言います。
しかし、その期間に耐えたからこそ大きな成果に恵まれたのです。そして、これは非常に不器用な生き方です。賢い人間にはできないかも知れません。
ですが、私も含めた多くの不器用で、非才の人間の唯一の成功パターンではないかとも思います。