今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

大切なのは顧客が求めている内容ではなく、その理由

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(写真:木枯らしの街)

《ショートストーリー》

ある日、「私、欲しいものがあるの」と奥さんが旦那さんに一枚の写真を見せました。
それは、ショーウィンドウに飾られているアクセサリの写真でした。
最近仕事が忙しくて、奥さんとすれ違いばかりの旦那さんは、名誉挽回の機会とばかりに、なんとか奥さんの望みをかなえたいと思います。

値段を聞いてみると、多少値は張るものの、決して買えない金額ではありません。そこで、さっそく次の休みにふたりは連れ立って、アクセサリの飾られているジュエリーショップを訪れました。
ところが、残念なことに、奥さんの欲しがっていたアクセサリは既に売れてありませんでした。店員さんに取り寄せられないかを聞いてみたところ、製造元が廃業して同じものは二つとないとのこと。
肩を落としてガッカリしている奥さんを見て、旦那さんは、「もっと高い別のアクセサリでもいいよ」と申し出ますが、奥さんはどうしても写真のアクセサリが欲しいようで、首を縦に振りません。
ネットで、同じようなデザインのアクセサリを探しては、奥さんに見せるのですが、色が違うとか、デザインが少し違うとかで、どうしても納得しません。

どうして、そこまで拘るのか?
途方に暮れた旦那さんは、奥さんの古くからの友人に相談しました。
そして、旦那さんの話をじっと聞いていた、その友人は彼にひとつのアドバイスをくれたのです。

それから数日後、旦那さんは奥さんを夕食に誘いました。
「ねえ、あなた、どこへ連れて行ってくださるの?」
「いいから、着いてのお楽しみだよ。」
旦那さんが、その日に予約したのは海辺のレストランでした。
「あ、あなた、ここって」
「さ、いいから、早く席について」
そして、運ばれたコース料理も奥さんには懐かしいものでした。
その時、パーッと花火が上がり、夜の海を明るく照らしました。
このレストランも、この料理も、あの日と同じ。そして、10年前のあの日、花火が上がった瞬間に旦那さんは奥さんにプロポーズをしたのです。

「ゴメンね、結婚して10年も経つと、お互い当たり前の存在になって、気遣いが足らなくなるんだよね。だから、プロポーズをしたあの時の気持ちを思いだそうと、レストランも、料理も、花火も全部同じにしたんだ。」
奥さんは、旦那さんの行き届いた演出に言葉がでないくらい感動しました。

さて、旦那さんは、奥さんの友達からどんなアドバイスをもらったでしょうか?
じっと旦那さんの話を聞いていた友達は言いました。
「ねえ、あなた、このアクセサリ見覚えない?」
「あ、そう言われてみれば・・・。」
「私はあるわ。だって奥さん、結婚したての時に、よくパーティに身につけていたもん。」
「あっ、そうか。これは、僕が家内にプロポーズをした時に贈ったアクセサリだ。でも、子供の出産とかで、お金が必要になった時に、泣く泣く手放したんだ。」
「きっと、奥さんにとって大切なのはアクセサリより、新婚の時の二人の気持ちなのよ。じゃなかったら、そこまで同じアクセサリに拘る訳がないわ。」
「それで、たまたま街で同じアクセサリを見つけて、それを身につければ僕ら、新婚当時の気持ちを取り戻せると思ったんだな。」
「だったら、アクセサリだけに拘る必要はないんじゃない?二人の大切な思い出に関することなら、なんでもいいのよ。」

〜・〜

奥さんが欲しがったのは、アクセサリと言う「もの」でした。しかし、本心はまったく別のところにあります。それを見誤ると、どんなに努力しても奥さんの気持ちを満たすことはできません。
反対にその本心、「なぜそれを求めているか」が分かれば、他の何かで気持ちを満たすことができます。

最近、私もこんなことがありました。
お客さんから、プログラム変更要望の一覧を受け取り、見積を弾いたところ結構な金額になりました。
そうしたら、お客さんの方に「ここまでお金をかけてする効果が本当にあるのか?」と疑問が湧いたのです。
そこで改めて、業務で実際使っている人に「本当はどうなることがベストなのか」を聞き取りすることになりました。
これは、お客さんサイドのことですが、お金をかける内容よりも、お金をかけるべき理由に目が向いたということです。

人間は、気持ちや要求を「もの」で表現します。しかし、「もの」の奥に、本当の気持ちが存在するのです。
そこを見誤ると正しい提案ができません。常にそこを意識して、お客さんの本心に寄り添うことが大切だと思います。