今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

成長とは、考え方×情熱×能力#104

(写真:ひまわり揺れて)

報告

「カヨ、お前、大丈夫か?なんか、無茶苦茶疲れてねえか?」

「あ、あははははは。」

「お、おい、ついに壊れやがったか。」

「はひ、たいじょうぶれふ。」

大勢の人間が絡んで大騒ぎした、あのバースデイパーティの、昨日の今日。
すっかり精根尽きた歌陽子だったが、なんとか朝から出社を果たした。

「嬢ちゃん、もう、けえったらどうなんでえ。なんか、尋常じゃねえことがあったのは間違えねえようだし。」

その時、

「前さん、泰造がこんな画像を送って来ましたよ。」

そう言う日登美のスマホの画像を、野田平と前田町が覗きこむ。

「あ、こりゃいけねえ。」

「お前ら、上流階級はいつもこんな馬鹿やってんのか?」

呆れた二人の顔に、気になって歌陽子も覗きこんでみた。

そしてそれを見た時、瞬間的に歌陽子の思考はピッと繋がった。

それは、

巨大な蓮のバルーンに必死にしがみついている歌陽子の画像。とても本人にとっては見られたものではない。
ただ、蓮からは、無数の花びらが降り注ぎ、絵としてはなかなか悪くなかった。
だが、こんな姿態を晒すのは歌陽子として本意であるはずもなく、しかも、なぜ日登美がそれを見ている?

日登美は、確か泰造と言った。
そして、歌陽子の頭の中には一本の線が繋がった。

オリヴァー → 泰造 → 日登美父。

あ、あいつらあ!

心の中で、とても口にできない言葉で罵りながら、歌陽子はいきなり手を伸ばして、日登美のスマホを奪おうとした。

「おっと。」

昔取った杵柄で、見事な反射神経でかわす日登美。

「歌陽子さん、今じゃスマホは高いんですから、乱暴なことはやめて下さい。」

「ひ、日登美さん、さ、削除お願いします。どうか、どうか、お願〜い!」

「おめえ、必死だなあ。」

「そりゃ、仕方ねえだろ。東大寺の令嬢がすっかり晒しもんだ。」

「歌陽子さん、無駄ですよ。これ、インスタグラムですから。」

「へ・・・?」

(何、私・・・世界中に晒し者ってこと?)

そして、火がついたように泣き出す歌陽子。

「うわあん、ひどおい。私、何にも悪いことしてないのに。もう、お嫁にいけなあい。」

「う、うるせえ!向こうで泣け!」

なすすべもなく、ただ泣くしかない歌陽子を、日登美が慰めた。

「まあ、まあ、歌陽子さん。泣かないで。結構、大人気ですよ。ほら、50万アクセス。コメントもどんどん増えていますよ。」

「50万・・・50万!」

「いえ、違います。今、51万になりました。」

「う・・・、うわあん。どうしてくれるんだ!私の人生、どうしてくれるんだ!」

「いいじゃねえか、おめえみたいなノータリンが東大寺に生まれたついたこと自体、晒しもんみたいなもんだからよ。」

「うわあん、ひどい。ひどおい!」

「バカ、のでえら、あんまり泣かすんじゃねえよ。うるせえだろうが。」

開発部技術第5課は、朝から賑やかである。

「まあまあ、まあ歌陽子さん。コメントを読んで見たらいいですよ。」

「う・・・、ジャパニーズ ビューティフルガール・・・、プリティ フラウレディ・・・、ソー ビューティフル ライク フラワー・・・。」

「ほら、褒め言葉ばかりですよ。」

「う・・・、ひっく。うう。」

「ほおら、機嫌が直った。」

その時、野田平が日登美にこっそり囁いた。

「でもよお、これ・・・・スタピッド ジャパニーズ ガール、って、バカな日本人ってことだろ?」

「しっ・・・、せっかく泣き止んだんですから、泣く子に灸(やいと)みたいなことはやめてください。」

「まあ、なんにしろだ。嬢ちゃん、気の重いイベントも終わったんだし、あとはロボコン目指して頑張んな。」

「は、はあい。」

まだグスグス言っている歌陽子、返事も思い切りトーンが低い。

「それで、嬢ちゃんの弟、なんて言ったか。そっちはどおなんでえ。」

「それが・・・、宙は助っ人を頼みました。」

「睨んだ通りだぜ。クラウドソーシングで東大寺の名前をだしゃ、わんさか群がってくるぐれえは、想像ついてたしな。」

「その、あいつはシンガポールのイケメンで、いきなりプロポーズするし、頭にきて投げ飛ばしたら、今度は希美さんと由香里さんを懐柔し始めるし。」

「は?カヨ、おめえ何言ってんだ?まだ、頭の線、飛んでんじゃねえのか?」

「嬢ちゃん、もっと落ち着いてしゃべりねえ。」

そこで、歌陽子は深く深呼吸をした。

「ふうう。あの、その人はオリヴァー・チャンって言う嫌な外国人で・・・。」

「おめえ、何があったか知らねえが、随分感情を素直に顔にだすようになったなあ。」

その時、

「あの、歌陽子さん、今、オリヴァー・チャンって言いました。」

日登美が念を押すようにオリヴァーの名前を繰り返した。

「先生、知ってる奴か?」

「はい、厄介な相手です。」

(#105に続く)