今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

成長とは、考え方×情熱×能力#47

(写真:松ぼっくり)

ライバルは突然に

「い、いえ。そんな・・・大それたことなど。」

歌陽子(かよこ)は完全にしどろもどろで答えた。

そんな歌陽子の様子には一切頓着せず、三葉ロボテク代表取締役社長 牧野は言葉を継いだ。

「他の会社はいざ知らず、我が社が代表のおっしゃる自立駆動型介護ロボットに前向きでなかったのには理由があってのことです。
確かに、社内では私のことを志しがないとか、拝金主義だとか言う声があります。
自社ブランドの製品を減らし、その間の糊口を頼まれ仕事で凌いでいると見えるでしょう。
しかし、私に言わせればこれまでは忍従の10年でした。私が代表より、社長を拝命した10年前を思い出して下さい。
技術はあっても、ろくな販路も持たない、原価計算もできない、放漫経営のなれの果てが三葉ロボテクでした。その敗戦処理に赴かされたのが私です。
もちろん、社員のメーカーとしての誇りは理解しております。ただ、その過剰な誇りが会社経営の破綻を招いたのです。
私とて、メーカーとして三葉ロボテクを再度立ち上げたいとは思いますが、まだそのための体力が十分ではないのです。」

そこで、口を挟んだのは浦沢だった。

「牧野さん、私のようなものが口を挟むことではないが、今や三葉ロボテクの社業は3倍に拡大し、社員数も300を数える。牧野さんが立派な仕事をした証拠です。それ故、今はまた攻める時期に来ているのではないですか?」

牧野はチラリと村方を一瞥すると続けた。

「村方さんなら、よくご存知でしょう。三葉ロボテクを立て直すためには、とにかくお金が必要でした。そのため、薄利でも多くの仕事を確保する必要があったんです。当然、それだけの仕事をこなすだけのキャパも用意しなければならない。結果、今の300名体制です。
ですから、三葉ロボテクは拡大したと言うより肥大化したと言った方が正しいのです。
確かに、社員の努力でかなり社業は安定して来ました。しかし、自立駆動型云々に取り組めるほどには余裕はないのですよ。」

「なるほど。」

東大寺グループ代表 東大寺克徳は、牧野の言い分に対して、まず一言を返した。

「しかし。」

克徳には、克徳の言い分があった。

「本件に関しては、技術のみならず、資金面でも、グループとして支援を行うと伝えたつもりだが?」

「ですが、資金は補填されても時間ばかりは埋め合わせは効かないでしょう。
この業界は流れが早い。少し油断をしていると、あっと言う間に置き去りです。
私たちは受託開発を通じて、常に最先端の技術と向き合っています。それで何とか世の中の流れについて行っているのです。
そこへ、自立駆動などと、海のものとも山のものとも分からないものに時間を奪われていたら、気がついたら浦島太郎です。」

そこで、たまらず浦沢が声を上げた。

「いや、牧野さん、企業は存続さえすれば良いのではありませんよ。
これから10年を見据えて、医療やロボティクスを構想しようと言うのが代表のお考えではないですか。」

それに対して、しばらく沈黙をした後、

「ならば・・・。」

と、声を落として牧野が言った。

「私が正しいロボティクスのビジョンをお示ししましょう。」

そして、歌陽子の方を向いて、

「東大寺課長。」

「は、はい。」

「もう、あなた方はロボットコンテストに向けかなり準備を進めているのでしょう?」

「・・・はい。」

「ならば、私たちは、三葉ロボテクの威信をかけて特命チームで迎え撃ちます。
ロボットコンテストまで、あと一ヶ月と少しですが、あなたの考えるロボティクスと、私たちのロボティクス、どちらが理にかなっているか、ここはひとつ代表にご判断いただきましょう。」

「・・・面白いな。」

「お父様?」

「歌陽子、面白いじゃないか。」

「え?」

「この牧野さんをここまで本気にさせるとは、お前のチームはたいしたものだ。
ここはひとつ胸を借りる気持ちで思い切りやったら良い。」

「す、少し待ってください。そんな簡単には・・・。」

今までプレゼンの相手と簡単に考えていた牧野社長が、俄然闘志をむき出しにして、突然のライバル宣言である。
とにかく急展開に気持ちがついて行けずに、やっとそれだけを口にした歌陽子であった。

(#48に続く)