今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

ホットなアイディアの罠

(写真:カントリーハウス その1)

グッドアイディア!

アイディア一つ。
デジタル全盛の今の世の中、すっかりその感があります。
今までアナログで行なっていたことをデジタルでどう置き換えるか、そのアイディアが出れば破壊的イノベーションが生まれます。上手くすれば急成長企業を立ち上げられるかも。
しかし、アイディアにも「固いアイディア」と「柔らかいアイディア」があると言います。
よく練りこんであって矛盾点を指摘されてもビクともしないのが固いアイディア。反対に、細かいところまで練りこんでいないから、すぐに考えの足りないところを暴露してしまうのが柔らかいアイディア。
かのサイバーエージェントの藤田社長に、同社の企画部門がビジネスのアイディアを持ち込んだ時、よく練りこんで持参しないとすぐ帰されるそうです。
しかし、アイディアを思いつくと自分の中で結構盛り上がってしまうものです。特に出来立てホヤホヤのホットなアイディアは、その眩しさに自らが幻惑されて細かいところまで目が行き届かなくなります。
今日は、そんなお話です。

ホットなアイディアにご用心

東京のカフェにて。
「いやあ、すまんすまん。仕事大丈夫だったか?」
「ほんと、びっくりしたよ。お父ちゃん、急に東京出て来てすぐに会いたいって言うんだもん。」
「いやあ、とってもジッとしてなんかいられなくてなあ。こうしている間にも、俺のアイディアが誰かに先越されたらどうしようかと思うと心配で心配で。」
「またあ、いつもの悪い癖。長野で大人しく果樹農家やってればいいのに、すぐ変なこと始めるんだから。」
「まあ、そう言うな。今度の今度はホンモノなんだから。」
「だからって、何もワザワザ東京まで来なくたって。」
「いや、お前の力がいるんだ。だから、ここまで来たんだよ。」
「お金なんかないよ。」
「ばか、誰が自分の娘なんかにたかるか!そうじゃなくて、ホラッ!あのインターネットとかで見られるやつ作って欲しいんだ。」
「ウェブサイトのこと。私、まだ2年目の下っ端だからたいしたことできないよ。」
「別にお前じゃなくても、お前の会社ならなんとかなるだろ。」
「そりゃ、仕事なら受けて貰えるけど、たくさんお金がかかるよ。」
「いくらぐらいだ?」
「まあ、数千万から、ってとこかな。」
「・・・いや、うちの農地全部担保にしても構わないくらいの凄いアイディアなんだ。」
「ちょ、ちょっとやめてよ。実家がなくなっちゃうじゃない。」

頭を冷やして見えるもの

「まあ、そう言うな。まずは話を聞いてくれよ。」
「い、いいけど、へんなこと言ったらすぐ帰るからね。」
「じゃあ、言うけど、このアイディアはお父ちゃんのものだからな。横取りするなよ。」
「はい、はい、しないわよ。早く言ったら。」
「あのな、うちはリンゴを作って農協に卸してるだろ?もし、直売できたらものすごく儲かると思わんか?」
「あ、まさか、リンゴのウェブ販売を考えてる?ありきたりだなあ。農協に睨まれても知らないよ。」
「バカ、お父ちゃんのこと見くびり過ぎだ!そんなこと今日日中学生でも思いつかあ。」
「なんだ、分かってるじゃん。」
「そうじゃなくて、俺が考えたのは、リンゴのインターネットオークションだ。」
「え・・・どうやんの?」
「まずな、うちのリンゴで出来がいいのがあるだろ?木になったままの状態でどんどん写真に撮るわけよ。あとは、インターネットに載せて、買いたい客が競り落とすって仕組みだ。」
「え?一個づつ?そんな手間なこと誰すんの?まだ、箱詰めしてヤフオクに出店した方が気がきいてるよ。」
「ばあか、果樹園からもぎる感じがいいんじゃねえか。」

アイディアを疑う力

「そんな木になっている写真を載せたくらいでバーチャル果樹園なんかにならないわよ。」
「だから、そこはプロのワザでなんとかさ。」
「それにさあ、リンゴ一つくらい競り落としたって送料どうするの?リンゴの何倍も送料がかかっるって分かったら皆んな引くわよ。」
「もちろん、たくさん買って貰ったら送料無料とかにしてもいいぞ。」
「なんか、だんだんコンセプトから外れてない?果樹園で気に入ったリンゴをいつでももいで食べられるイメージなんだよね。」
「まあな。」
「それなのに箱買い前提なら、木になっている写真とか、オークションとか意味なくない?」
「う〜ん、どうしたらいいんだ。」
「そおねえ、例えば、うちが作っているのはリンゴだけじゃないよね。サツマイモとか、とうもろこしとか、いろんなものを詰め合わせたら?
でも、うちだけじゃ品数限られるし、限界あるかも。
そうだ、近所のみんなにも声かけて、そうしたら、品数も量も確保できるでしょ?
そうそう、ネットスーパーみたいにして、あれとこれと、って選んで、農家から詰め合わせが直接届くのは新しくない?」
「ちょっと待て、随分大きな話になってきたなあ。あんまり目立つと農協に睨まれるんじゃないか?」
「何よ、それくらい覚悟の上でしょ?まずは、近くの農家から仲間を増やすことね。」
「はあ、最初はいいアイディアと思ったんだけど、いろいろ難しいんだな。しゃあない、いっぺん持ち帰るわ。」
「ふふ、顧客から無理難題言われたサラリーマンみたいね。」
・・・
アイディアか浮かぶと思わず嬉しくなって走り出したくなります。
でも、自分の中ではよくても、まだまだ固いアイディアには程遠いようです。
つらくてもよく人の意見を聞いて、柔らかいアイディアが固いアイディアになるまで練り込みたいものです。