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今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

すぐ承認される企画はロクなものでない(其の壱)

(写真:初夏の富士 その2)

良い企画とは、聞いた人の度肝を抜く。
「いやあ、そう来たか、考えもつかなかった」とびっくりさせる。
あるいは、「お前、気は確かか?」と怒られる。
そんなものかも知れない。
誰も思いつかないから、簡単には理解されないし、通すためには苦労する。
しかし、そこを突破したら、きっと新しい展開が始まる。

出城

「殿、またあの城を見ておられるのですか。」
「うむ、あの出城め、我が天守からよく見えるので余計癪に触る。」
「我らの思慮が足らなかったゆえ、まことに申し訳のない仕儀と相成り申した。」
「良い、言うな。みなわしが認めて行なったこと。責めはわしにもある。
それにしても、結城團右衛門め、最初から秋津方と通じておったとは、見抜けなんだは返す返すも口惜しい。」
結城團右衛門は、二年前に召し抱えられた牢人である。
地理に明るく、築城の才も認められたので、当地の領主、稲場龍興は「人物なり」と喜んで高禄で迎えた。
そして秋津とは、領土を接してたびたび小競り合いを繰り返す隣国のことだった。
その外患を取り去ってみせますと、かの結城が持ち出したのが、秋津領に接する出城の建設だった。
最初稲葉龍興は、それは秋津がなんとしても邪魔立てをするだろうと取り合わなかったが、結城の献策には領主以下家臣もみな納得せざるを得なかった。
その献策とは、
出城を造るのは稲葉領の中で、秋津方も手出しができない場所であること。
しかし、城の一方は秋津領に接した断崖になっており、城からは秋津方の動きが手に取るように分かること。
城を造るのは険しい岩山の上で、出城に至るためには左右が切り立った岩場を縫うわずか一本の道を通らなくてはならないこと。
その道は稲葉領から秋津領を結ぶ進軍の道筋と垂直に交差していた。稲葉から秋津に攻める時はそこから援軍を送ることが出来、反対に秋津から攻め寄せて来た時は、出城から敵の脇腹をつく必殺の手勢を繰り出すことができた。

城攻め

この結城團右衛門の献策には、稲葉龍興並びに重臣一同二も無く賛同し、さっそく結城を中心に築城が始まった。
やがて、出城も完成し、いよいよ稲葉方から手勢が入城する直前のことだった。
突然、結城が彼の子飼いの兵たちと謀反を起こした。結城團右衛門は、最初から秋津方と通じており、稲葉をそそのかして彼らの労力で城を築かせたのだった。
領内のこともあり、すっかり油断をしていた城内は警護が手薄だった。そこをいきなり結城一味に襲われて、城内の兵は混乱した。
それ乗じて、秋津に面した断崖からは、多くの秋津方の手勢が湧いて出た。
やがて、それらの手勢が入場し、出城は完全に秋津方に占拠された。
してみると、秋津への有力な戦略上の拠点を手に入れる筈が、そこを押さえられてはノドもとに刺さった非常に痛いトゲとなる。
何しろ、その出城からは稲葉方の動きは逐次筒抜けで、また夜陰に乗じてどんな奇襲を仕掛けられるかも分からない。
秋津方が攻め寄せた時は、手勢を繰り出して加勢されるし、逆に稲葉方から攻め寄せる時は、出城から手勢を送られ隊の脇腹を突かれかねない。
言わば出城の所為で、秋津方への侵攻路を完全に塞がれた格好なのだ。
その経緯が思い出され、稲場龍興は顔に憂いを浮かべた。やがて、その場に侍していた重臣にこう命じた。
「三衛門を呼べ。」

(其の弐に続く)