今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

制約を味方につける

(写真:モノトーン)

あれも、これも足りない

モノ、ヒト、カネ。
これらは、足りないのが普通。
モノがない。
お客さんが両手を上げて、買いに来てくれるモノがない。
他社と差別化ができる優れた商材がない。
充分な利益が確保できる旨味のある商品がない。
ヒトがない。
優秀なマネージャーがいない。
身を粉にして会社に尽くす社員がいない。
革新的なアイディアを実現する技術者がいない。
カネがない。
余裕を持って運営できる資金がない。
信用を得るだけの資本力がない。
研究開発に回せるお金がない。
第一自分に能力がないし、知恵も出ない。
人望もなければ、信用も人気もない。
自由に使えるお金もない。
あれもない、これもないから、何にもできない。

松下さん曰く

しかし、かの松下幸之助氏は、
「あなたの成功の秘訣は?」と問われて、「身体が弱かったことと、学問がなかったこと」と答えている。
無いからできなかったではなく、無いから出来た、と言う。
松下氏は、学問がなかったから社員が全員自分より偉く思えた。だから、素直にみんなの意見によく耳を傾けた。そうしたところ、自然にみんなの知恵が集まり上手くいった。
また、身体が弱かったから、思い切って部下に仕事を任せてみた。そうしたら、みんな自分の持ち味を生かして、どんどん仕事をした。
そうやって、会社がどんどん発展して来たと言う。
松下氏は、自分の制約を「身体が弱い」と「学問がない」と語っている。
我々は、成功している社長のプロフィールを見るとき、出身大学や見事な経歴に注目する。
さすが東大出とか、外資のコンサル会社で揉まれて来ただけはある、とか。
松下社長が自分を語る姿とは真逆の優秀な人たちである。
その松下氏が、今でも群を抜く優秀な経営者と讃えられている。
松下幸之助の松下たる所以は、自分のそんな制約をも武器と考えた優れた見識にある。

制約を味方につける

よく「時間がないからできない」と言う。
しかし、自分の経験から言えば、「時間があっても、やっぱりできない」である。
仕事の追い込み時期、時間がないから余分なことはできない。
そして、もう少し時間ができたら、あれもするのに、これもするのにと夢想する。
そんな時である。
不満顔の家内の気分を紛らわそうと、「もう少し時間ができたら、家の庭をキチッとするから」と口走る。
でも、仕事がひと段落して、家でのんびり過ごし始めると、約束のことなどすっかり忘れてしまう。そして、家内に叱られて、やむなく庭に出て草むしりのまねごとをする始末。
もちろん、最初から嘘をつくつもりはなかった。
忙しい時は、時間さえあれば、何でもやれる気持ちになっていた。それは、目の前の仕事をこなすために、知力、体力、気力を総動員しているから、いわゆるテンションアゲアゲ状態。何だってやれる気持ちになっているし、また実際できてしまう。
でも、本当に時間が出来て、下手にクールダウンしてしまうと、もう身体も心も動かず、ウォームアップから始めなければならない。
だから、忙しい時ほど勉強ができるとも、急ぐ仕事は忙しい人に頼めとも言われる。
時間がないと言う制約を味方につける人こそ、本当に勉強も仕事もが出来る人である。

制約があるから考える

時間がない制約が、時間の最大限の有効利用を考えさせる。
お金がない制約が、無駄遣いを敏感にチェックさせ、一番コスパの良いお金の使い方に知恵を絞らせる。
昔、小額のお金を渡されて、いかに数日間飢えをしのぐかと言うテレビ企画があった。
その出演者たちは、なんとか手に入れた食材をとても嬉しそうに口にしていた。
お金が十分にある時は、本当のお金の価値も、食材の有り難みも分からないだろう。
企業も同じ。
潤沢に運転資金があれば、どうしても投資に対する回収は甘くなる。投資だけなら良いが、その維持管理にまた多額のお金が必要になる。ついには、会社の屋台骨を揺るがすまで気がつかない。
資金が限られていれば、さんざん悩んで悩んでお金を使う。失敗は許されないからである。そして、制約が知恵を生み、道が拓ける。
人がいない制約が危機感を生み、一人一人の参加意識を高める。集合知を生み、社内に無いことは、素直に外に求める謙虚さとなる。
制約は、制約ではない。
制約は、味方であり、知恵であり、意識であり、武器なのだ。