今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

長男病

(写真:硝子に映える)

惣領の甚六

昔から、「惣領の甚六」と言われます。
「惣領」とは、長男長女のことで、「甚六」はお人好しや愚かな人を意味します。
長男長女は、昔なら大切な跡取りです。
必然的に、大事に、余り世間の風に当てないように育てられます。
ましてや、修行のため、遠くに一人で送り出すこともなかったでしょう。
そうすると、長男長女は、概しておっとりした世間知らずに育つので、「甚六」と言われました。
ちなみに、私も長男なので「惣領の甚六」と言われた口です。
しかし、家が昔ほど重んじられず、跡取りの意味も変わった今では、長男はそんなに大事に育てられるわけではありません。
むしろ、弟や妹の関係で割りを食うこともあるのです。

甘え下手、自由人に甘え上手

「長男は良いな、何でも新品を着せて貰えて。次男坊は、いつもお古やお下がりばかり。」
確かに、そんな時代もありました。
ひどい時は長男が死ぬと、後家になった長男の嫁を次男が妻されることもあったと言います。
しかし、それはもう昔の話。私の頃ですら、弟や妹は、お古など着ていませんでした。
多少おやつや、おかず、お年玉なんかは多めに貰えると言う役得はありましたが、長男はとかく親の目に立つので叱られ役です。
よく「お兄ちゃんなんだから、妹や弟に譲りなさい」とか、「お兄ちゃんなんだから、兄弟の面倒を見なさい」と言われました。
身体が大きい分、威張れたところはありますが、基本我慢をさせられることが多かったように思います。
何しろ、弟や妹と何かを取り合って揉めたら、大抵怒られるのは私でしたから。
結局、親の目が届かないのをいい事に、のびのびと過ごした弟は自由人に、いつも可愛がられた妹はとても甘え上手になりました。
そして、私は我慢を覚えた見返りに、とても甘え下手になったのです。

甘え上手に憧れる

そんな私は、とても甘え上手の人に憧れます。
いや、別に甘え上手な人に人徳があったり、容姿が優れているわけではないのです。
ただ、人に頼むのに臆面がない。
「ねえ、いいでしょ。お願い。」
そう頼まれると、長男気質の自分はつい言う事を聞いてしまう。
これはうちの家内の話で、末娘の家内はとても甘え上手なのです。
私たち長男族はどうして、上手く甘えられないのでしょうね。
やはり、人の手を取るくらいなら、まず自分が我慢すれば良いと飲み込む癖がついているからでしょうか。それに、人に世話になるとひどく恐縮してしまうところもあります。
それは、時に社会では損に働くことがあります。
例えば、多くの仕事を任された時、上司は自分が仲間にうまく割り振って仕上げることを期待していると思います。
しかし、それは分かっても、誰かに頼むこと自体苦痛です。
それは、いやな顔をされるのが怖いのかもしれませんし、「私は嫌」と拒絶されるのが恐怖なのかも知れません。

長男、長女の生きる道

それで、結局最後まで自分一人で抱え込むことになります。
自分一人で抱え込んで、ヒーヒー言って仕上げても、誰も感謝も褒めもしないどころか、お決まりの一言を貰います。
「あのさ、何べんも言うけどさ、何で人に振らないの?」
きっと上の人からは、これ以上大きなキャパの仕事は振れない、ダメな奴と思われていることでしょう。
でも、人に甘えない。甘えるくらいなら我慢する。そんな一文にもならないやせ我慢をどうしてやめないのでしょう。
長男に生まれたことを恨むわけではありませんが、もっともっと気軽に人に甘えられる人間になりたいと願います。
とは言え、今さらガチガチに固まったこの性格、さながら長男病なのでしょうか。
直しにかかっても、もはや手遅れ。
甘えないのも、人間いつか一人になった時、折れずに強く生きていける利点もあります。
あとはだんだんゴールが見えてきた社会人人生を、もう少し我慢して走りぬきます。