今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

あえてアドバンテージを手放す

(写真:暮れなずむ桜 その4)

私たちのアドバンテージ

アドバンテージ、直訳すれば優位性。
そして、それは先輩や自分たちが過去に苦労して手に入れたものであり、財産です。
その財産のおかげで、今の自分は人より楽して生きることができます。
例えば、今の私たち日本人がそうです。
太平洋戦争の戦禍で日本中が焼け野原になりました。もはや、この国はかつての繁栄を取り戻すことはないだろうと、周りの国も、アメリカも、そして日本人自身も思いました。
それが戦後復興の名の下に、驚くべき短期間で立ち上がり、ついにはアメリカに続く世界第2位の経済大国になったのです。
それは戦後を支えた私たちの祖父母、親世代が血みどろの努力で開いたものです。
そして、戦後しばらくして生まれた我々は、そのおかげでとても恵まれ、家にテレビやマイカーがあって当たり前、いつでも冷蔵庫に食べるものがあって当たり前、国のお金で勉強をさせて貰って当たり前の生活をしています。
ところが、ここに来て、私たちの常識が崩れつつあります。
GDPでは遥かに中国に差をつけられ、世界第2位の経済大国の称号を譲ってしばらく経ちます。
さらに、日本国内でも、自治体は軒並み赤字財政に苦しみ、ついには破綻する自治体まで現れました。そこに暮らす人たちは、公共サービスを利用するために高いお金を払わねばならず苦しんでいます。
私たちの一億総中流意識も崩れ始め、急速に格差社会へと移行しています。そして、私たちもいつ貧困が現実となるか分からないのです。

目隠しをするもの

財産があれば、楽して生きられると書きましたが、残念ながらそれは使えば減ってしまうものです。
よく放蕩息子が、親から受け継いだ莫大な資産を一代で食いつぶす話を聞きます。
放蕩息子は、最初から恵まれているため、財産があることが当たり前です。財産がない状態を知らないので、なくなればどうなるかを想像することができません。
だから、自分の感覚に任せて、割と平気で使ってしまいます。たちまち、あんなに有った財産も半分になり、ちょっぴり反省したり、怖くなったりします。しかし、良い状態しか知らないので、悪くなった時を想像することができません。
かくして、まだ半分あるから、まだ、三分の一あるから、あと山が一つあるからと無理矢理気持ちを落ち着かせて、現実から目をそらすようにますます浪費に拍車をかけます。
そして、全てを失うのです。
これは、財産と言うアドバンテージがあることの都合の良い面ばかりを見て、財産がみるみる減っている負の面から目をそらした結果です。
なまじアドバンテージがあると、対処すべき問題から目をそらしがちになります。つまり、アドバンテージこそ、目隠しの原因なのです。
何だか、今の日本の状況に似ていませんか?

あえてアドバンテージを手放す

最近、報道でやたら気になるのは、自国民を褒めすぎることです。
特に、3.11の時、日本人の整然とした行動が実に素晴らしかったと、海外メディアが絶賛しました。そして、それを盛んに逆輸入しては流していました。
もちろん、震災で打ちのめされた日本人を励ますために素晴らしい効果はあったと思います。
ですが、その後も延々とその類の報道が目立ちます。モノづくりナンバーワン、おもてなしの心、高いサービス品質の国。
あるいは、クールジャパン。
確かにアニメや漫画文化は諸外国より盛り上がっているかも知れませんが、それは韓流映画と同じでカルチャーの一分野についてのことに過ぎません。
まるでジャパンアズナンバーワンと言われたバブル期の気分を、いつまでも私たちに刷り込もうとしていると言ったら言い過ぎでしょうか。
前はこうではなかった気がします。自国民の快挙には国中で歓声を上げましたが、普段は他国の優れているところを直視し、追いつけ追い越せが共通認識でした。
それを、自分たちがまだ持っているアドバンテージをやたらかき集め、国民全体で賛美する、そんな最近の傾向はいかがなものでしょうか。
むしろ、今はアドバンテージを手放すべき時かも知れません。

新天地を目指す

よく、会社で新しい企画を任せたら、今までの仕事の一切を取り上げると聞きます。
それは、新しいことしか出来ないように退路を断つためです。今までの仕事を続けながら取り組むと、間違いなくその人は既存の仕事にかけるパワーが高くなります。
今までの仕事は慣れた仕事であり、そこは自分の存在価値を見出し易いアドバンテージだからです。
人間は不慣れで辛い道より、慣れて得意な道に気が向きます。そのため、そこに逃げ込まないようアドバンテージを取り上げて、辛くても新天地で頑張らば、自分の存在証明ができない状況を作るのです。
私自身も、日本の技術が中国や韓国に負けていると聞くと不安になりますし、あまり良い気持ちはしません。反対にかの国の失政やまずいところの報道は進んで見てしまいます。
そうやって、私たち日本人は心のアドバンテージを守ろうとするのですが、都合の良い面ばかり見ていても何も変わらず、状況は悪くなるばかりです。
かつて日本が欧米を見て追いつけ追い越せと向けた視線が、今周辺国から我々に向けられています。そして現実に、あったはずのアドバンテージが失われ、立場の逆転が始まっているのです。
私たちは今、アドバンテージに目をくらまされぬよう、このようにきちんと現実を見る時期だと思います。