今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

飾らないこと、良い顔をしないこと

(写真:額絵 その2)

人間を飾るもの

お国自慢や地元出身の有名人自慢。
愛知県人の自慢はなんと言ってもメジャリーガーのイチロー。あるいは、大須スケートリンクから排出した安藤美姫や浅田真央。
世界企業のトヨタ自動車や、天下を統一した織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑。
自分の価値とは何の関係も無いのに、地元に有名企業や偉人がいると、ついつい他県の人に自慢を始めます。
あるいは、うちの親戚こんな偉い人いるよ。
確かに、「出世すると親戚が増える」とはよく言ったもので、父方の姉の旦那の、その従兄弟のような何処がどう繋がっているか分からない血縁まで引っ張りだして、親戚自慢をはじめます。
それだけ人間は、自己愛が強く、また評価に飢えています。その癖、裸の自分に自信がないから、お国自慢や親戚自慢までして飾り立てるのでしょう。

言葉、実績、ステータス

あるいは、ビジネス本を読み込んで、何かとは普段使わない横文字を並べたがる人。
ガバナンス、コアコンピタンス、ステークスフォルダ、ステアリングコミッティ等々。
普通に、「きちんと管理できているかどうか」「一番得意なこと」「利害が絡んだ人たち」「運営委員会」と言えば良いところ、わざわざ英語で難解な言葉を使う。なぜ、それをするかと言えば、その方が間違いなく「スゲエ」と思って貰えるからです。
また、自分が過去やってきた実績。
よく仕事の経歴書を貰うと、「100人規模で3年がかりの大プロジェクトに参加しました」と書いてくる人がいます。一見凄そうですが、「あなた100人の中の何番目だったの」と聞くとあっさり口をつぐんでしまいます。
それでも、大プロジェクトに少しでもかすっていたら自慢したい。そうすれば、自分が偉く見えるのです。
そして、ステータス。
昔の社長から聞いた話。
「飲み屋で知り合った人が、『あなた何処にお勤めですか?』と聞くので、『私は中小企業のオヤジ(経営者)をやっています』と答えたら、相手はさも自慢げに『そうですか、僕はNTTです』と言うんだ。『じゃあ、NTTで何をしているんですか』と聞いたら、もうそれ以上何も言えなくなりやがった」とか。
NTTでも、あるいは中小企業でも、大切なのは仕事の中身です。それを安易に企業名だけでそり身になると恥をかきます。
しかし、その仕事はどうあれ、世の一流企業に籍を置くだけでも十分自慢のタネには違いありません。
しかも、そんな自慢のタネを持っていて、それを使わずにおれるのは相当な人です。

裸の自分の価値

でも、私たちが知りたいのは、その人がどんな実績を持っていて、周りにどんな人がいるかではありません。
実際に一緒に仕事をして助けになるか、あるいは一緒に過ごして楽しい時間を送ることができるかどうかです。
営業マンが、ある経営者に面会し、「自分の企業にはこれだけの実績があって、僕の周りにはこんなにすごい人たちがいます」と力説をしたそうです。
その彼にくだんの経営者が一言。
「それで君はなんぼのもんや。」
その一言に営業マンは絶句してしまいました。
きっとこの営業マンは自分に自信がなかったのかも知れませんね。
だからこそ、やたら自分が所属している企業や、周りを自慢して自分を飾り立てようとしたのでしょう。
しかし、経営者が知りたかったのは、この男性自身に価値があるかないかです。
飾り立てた虚飾を振るい落としてしまった後、裸の彼が残ります。
そして、それは営業マンと長くお付き合いをする中で、どうしても表に表れてくる部分なのです。
そこが脆弱な人間は、途中で投げ出したり、酷い言い訳で責任転嫁するかも知れません。
だからその経営者にとって、営業マンの裸の姿は、彼の会社の実績以上に大切なものだったのです。

アウトプットでしか示せない

もう15年も前、私はチェーン店を展開する企業に入り込んで、そこの管理システムを立ち上げたことがあります。
そこは、私の会社とは長い付き合いで、システムの更新も3度目でした。
その信頼もあったのでしょう。
そこの社長が、私を過分な言葉で評価してくるのです。
「あなたなら、大丈夫よね。」
「安心していられるわ。」
でも、私にとってそのお客さんは初めてで、期待通りの仕事が出来るかどうかは、しばらく付き合って貰わねば分からないことでした。
ところが仕事の結果を見る前に、過分な言葉をくれるのです。
正直参りました。
そんな勝手に時価総額を釣り上げておいて、いざ結果にそぐわなければ、どれだけ価値が暴落するかヒヤヒヤでした。
そして、実際に思う通り結果が出せずかなり怒られました。
それは仕方ありません。
期待感が大きかったので、失望感も酷かったのでしょう。
それでも、最後までやり抜いた時には、とても喜んで貰い、心から嬉しい思いをしました。
結局、人間は裸の姿でぶつかって行って、最後そこで成し遂げることでしか評価されないものです。
決して、飾らない、良い顔もしない。
裸の俺の仕事を見てくれ。
アウトプットで語らせてくれ。
それは、不器用な自分の唯一の生き様です。