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今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

作業のわな

(写真:夕陽の牧場 その5)

■作業のわな

「作業のわな」
人間、当面の仕事があると、そこに意識が集中して、その他のことが見えなくなります。
例えば、倉庫に積み上がった荷物の山。
それを時間通り決められた場所に届けなくてはならない。
自社の車だけでは運びきれないから、お付き合いのあるところに声をかけ、空いている車をかき集めて、何とか運び切ろうとします。
やれやれ、今日も一日お客様に迷惑をかけずに仕事を終わらせることができた。
そうやって、1日1日が過ぎてゆきます。
しかし、一ヶ月たって、社長から呼び出されて怒られました。
「どうして、こんなに運賃がかかっているんだ。これでは、全く利益が出ていないじゃないか。」
「それは・・・お客様に迷惑をかけられませんから、とにかく運ぶだけで精一杯なんです。」
いつの間にか運ぶだけが目的になっていました。しかし、本来の目的は、商品を無事に納品してお金を貰うこと、そしてそこから利益を残すことです。
現場の我々は、目の前の作業をこなしていることに満足して、どうしても作業本来の意味を見失いがちです。
これが「作業のわな」です。

■人間悤々として衆務を営み

もう少し目を広く転じます。
地獄絵図で有名な、源信僧都の「往生礼賛」に
「人間悤々として衆務を営み、年命の日夜に去ることを覚えず」という言葉があります。
これは「人間は来る日も来る日も目の前の仕事をどう終わらせるかに心を奪われている。しかし、1日生きれば1日、1年生きれば1年、確実に人生の残り時間は削られているのだよ。どうして、みんなそのことに驚かないのだろうか」と言われている言葉です。
これも広い意味で言えば「作業のわな」です。
私たちは、毎日生きるための努力をしています。生きるとは、死に対して抗っている状態です。
そのために、食事や睡眠を取り、快適な住まいを求めます。そして、お金を得なければならないので一生懸命働きます。
しかし、豊かな生活や健康管理でいくらか延命はできても、永遠に生きることはできません。つまり、抵抗も虚しく最後には死に負けるのです。決して逃れられない終末に対して、私たちはそれを1日でも引伸ばすことだけに心を奪われています。
それはまるで、必ず負ける戦いに挑んでいる兵隊のようです。
果たして、これで本当に満足いく人生を送れますか?毎日生き延びて、最後どこに行き着くのですか?
非常に厳しいお言葉です。

■行き着く先は?

毎日過ごして、最後行き着く先はどこか?
会社ならば、毎日の作業できちんと月の売上が積み上がっているか?期末の利益は確保できているか?
あるいは、1年1年の活動が、会社の次の5年、あるいは10年の活動につながっていくのか。
マイクロソフトのOSがMS-DOSから、Windowsに切り替わった時、Windowsに対応できなかった多くの会社が退場しました。
そして、今デスクトップコンピューターとクラウドサービスの間でも同じことが起こっています。つまり、今はまだ企業が大量にサーバーとパソコンを抱え込んでいるから、そのためのソフト開発や保守の需要はたくさんあります。しかし、同時に巨大IT企業が提供するクラウドサービスも存在感を増しています。いずれ、導入も手軽で、ソフトも豊富、保守も要らないクラウドに全て置きかわると容易に想像できます。
そう、スマホで検索すれば欲しいアプリはたいてい無料で調達できるように、やがてデスクトップパソコンのソフト開発やソフト販売のビジネスモデルは過去のものとなるでしょう。
ですが、それが分かっていても、毎日忙しい現場の私たちに本当の危機感はありません。
今日はなんとかなったし、明日もなんとかなるんじゃないの?だから、明後日もなんとかなるだろうし、そのうちに変われるんじゃないの?
でも、本心は違いますよね。正直に見つめてみれば、今日と変わらない日がずっと続いていくと思っているのではないですか?
しかし、その歩みの先には何があるのでしょうか。

■作業の目的を知る

目の前の作業にとらわれるが私たちの本性です。
いや、むしろ作業さえしていれば安心できます。なぜなら、このままずっと同じ日が続くと自分を騙せますし、毎日忙しかったから仕方ないじゃんと言い訳もできます。
しかし、1日生きれば1日、1年生きれば1年、確実に周りは変化します。
最近私たちは事あるたびに、「世の中早すぎてとてもついていけない」と言いますが、世の中が加速度的に早くなっている以上に、私たちの意識が周りとズレている方が問題なのです。
毎日の作業は、今日生きて、現状を維持して行くためにはどうしても必要です。
しかし、いずれ現状は変化し、衰退して消滅します。最たるものが私たち自身の命です。
とかく周りが変化していることを口にすると、「何をそんなに騒いでいるんだ。落ち着け」とたしなめられます。しかも、それが大人らしい態度と思われていますが、それで皆んなホゾを噛んでいるのです。
作業だけにとらわれている目を転じて、きちんと変化に向き合い、行き着く先を確認したいと思います。「作業のわな」に騙されないように。