今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

膿を出すには痛みが必要

(写真:那覇の海 その9)

■膿の溜まった時

子供のころ、今よりもっと体格の良かった私は、巻き爪で随分痛い思いをしました。
巻き爪とは、足の親指の爪が食い込んで、ひどい時には膿んでしまう症状です。
肥満児に多く、とくに体重がかかる外側がひどくなりました。
爪の先端の部分が食い込むため、予防には常に足の親指の爪を短く清潔にしておく必要がありました。それでも、生来のものぐさなので、ついつい長いままで放ったらかしにしてしまいます。
そうすると、親指の爪がますます足に食い込んで、傷ついた部分が紫色に腫れ上がりました。つまり、膿んでしまった状態で、だんだん歩くのも辛くなってきます。

■膿を出すと楽になる

痛さに耐えかねて、靴下を脱いで腫れ上がっているところを見てみました。
するとやっぱり、爪の先端が指に食い込んで紫色になっています。
ちょっと触っただけで、かなり痛みがあります。それに、食い込んだ部分がジクジクして、膿が吹き出していました。
それで、意を決し、痛いのを堪えて腫れ上がっているところを押してみました。
すると、チューッと玉のようになって膿が噴き出してきます。
不思議なもので、膿が出すのは痛いことですが、だんだんと快感に変わってきます。
そして、全部出し切るとかなり痛みは楽になり、それから徐々に腫れもひいていったのです。

■膿の拡大

膿とは、身体に入った雑菌を白血球が攻撃した戦いの残骸です。
膿は汚いもの、気持ち悪いものと思われがちですが、身体の免疫システムが立派に戦った証拠でもあります。
しかし、組織などで「膿を出す」と使う「膿」は、決して良い意味ではありません。
例えば、特定の組織が長い間活動を続けてきた中で、明文化されずに常態化していくことがあります。
ドラマや小説でよく題材になるのが、お役所の資金プールの問題。
最初は、急な支出で資金の調達に困り、それに備えるために予備資金として確保しておいたものでしょう。もちろん、公的には記載できませんが、当初の目的は理解できない訳ではありません。
剰余金に名目をつけて、会計上は正しく処理したように見せかける。そして、少しずつ積み上がっていくと、本来の目的より貯める方が大事にすり替わってしまう。
やがて目の前に自由なお金を積まれた人間は、本来税金から出ているお金であることを忘れて、幹部の接待等に使うようになる。
しかも、それが間違いだと言うことすら忘れて、いつの間にやら組織では暗黙の了解になる。
いわば、組織の奥深くに潜んだ膿です。
もし対外的に公開されたら大問題になるので、この膿はバレないように組織の一部だけで共有され、また組織のポストを受け継いだ人間は必然的に共犯者にされます。
しかしいくら秘匿していても、バレた時の影響を思えば、だんだん大きな組織の痛みとなります。そして、組織内部に不協和音も生むのです。

■痛みを経験しなくては楽になれない

確かに「膿」とはよく言ったもので、痛みはありますが、下手に触るともっと痛い思いをするので、みんななるべく触らないようにします。
しかし、膿を抱えたままでは、本当に楽にはなれません。だから、誰かが意を決して声を上げるのです。まるで、溜まった膿を上から押して絞り出すように。
そうすると、外から一斉に組織は叩かれ、何人かが詰め腹を切らされるでしょう。お役所自身にも厳しい監査が入り、声を上げた人は周りから非難され居づらくなります。
でも、その痛みは本当に楽になるためには、どうしても必要だったのです。
・・・
これはフィクションや日本の一部の話じゃないか、と言われるかも知れません。
しかし、私たちの身の回りでも、いろんな膿が溜まってはいませんか。
例えば、今いる業界のビジネスがもう数年で終息すると分かっていても、忙しいからと敢えて目をそらす。
今の生活態度が何年後かに健康上の破綻を招くかも知れないのに、ついほったらかしにする。
あるいは、やがて老いて死んでいく。終活とは言いますが、私たちはあまりにその現実に無防備です。
これら全て、今はあまり痛みを感じないからついつい放ったらかしにしますし、敢えて手を出せばたいへんな痛みがあるのでなるべく触りたくないことです。
ただ、放っておけばおくほど痛みはだんだん強くなります。そして、いずれ取り返しのつかないことになるのです。
だから、敢えて痛みを覚悟して膿を出すように取り組みます。
今は痛みがありますが、それを過ぎたら後は楽になり、快方に向かうのですから。