今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

ビジネスに言い訳は効かぬ

(写真:地球探査船)

■悲しい事故

時に、私たちの仕事は命に関わります。
この間、都内の託児所で、1歳児が死亡しました。
その子供は、2時間半もうつ伏せ寝状態で放置され、職員が気がついた時はもう息をしていなかったそうです。
その後、病院に搬送されましたが、結局搬送先で死亡が確認されました。
せっかく生まれた命、両親は胎児のころから大切に育み、生まれてからも1年間成長を灯りに大事に育てていたというのに、残念でなりません。
ましてや、生まれてから、こんなに早く命を落とすことになるとは・・・子供自身の無念さを思うと胸が痛みます。
託児所では、昼寝時間に泣くと言う理由で、その子供を別室に移して寝かせていたと言います。それでついつい目が届かなくなり、放置してしまったのでしょう。
そんな基本的なルールさえ徹底されていないところが、免許を取得して営業しているのか、と問われそうです。
もちろん、そこは徹底されていたと信じたい。信じなくては、どこにも子供を預けられません。
しかし、ちょっとした気の緩みが取り返しのつかないことになります。
同じ職業人として、襟の正されることです。

■リスクを肩代わりするのがビジネス

そもそも、プロの本質とは何でしょうか。
プロを起用する目的は?
やはり、専門知識、高い技術力、あるいは、自分で調達するより安いから・・・と言ったところでしょうか。
しかし、本質の中の本質は、「我々で負えないリスクを代わりに負うことができる」ことだと思います。
前段の例で言えば、短時間なら、お母さん同士育児を交代して、子供の面倒を見ることはできるでしょう。
しかし、それが1日とか、毎日となると、とても無理です。ましてや、乳幼児の場合、例えば哺乳瓶に雑菌がついていた等の、ちょっとしたことが事故につながるので、とても責任は負いきれません。
だから、きちんと訓練を受けて、間違いの無いプロに任せるのです。
つまり、我々素人が行うと間違いを起こしやすく、ましてや責任が取れないことのリスクを代わりに負って貰うのがプロです。
タクシードライバーにしても、バスドライバーにしても同じです。
バスで言えば、一番気のはる人を、もっとも見晴らしの良い、運転席横の最前列に座ってもらうことがあります。しかし、乗用車の常識から言えば、これは間逆です。
この席は、一般の乗用車なら助手席です。そして、事故を起こしたら一番死亡する確率が
高い席でもあります。だから、一番気のはる人は、もっとも安全な運転席の後方に座って貰うのですが、バスの場合は、事故をしない前提があるので、もっとも危険であっても見晴らしの良い前方に席を取って貰うのです。
それだけ、プロには事故を起こさない責任があります。また、そこを見込んでリスクを肩代わりして貰うために、お金を払っているのです。

■いつもの業務に潜むリスク

しかし、責任の重さに対して報酬が見あっているか、と言う議論もあります。
例えば、医療過誤。
今はあまり聞かなくなりましたが、前は点滴の薬剤を間違えたと言う事故がよくありました。血圧を下げるつもりが上げてしまったりとか、薬剤の量を間違えたりとか。
しかも、それは病院の何千、何万回と言う医療行為の中に紛れて発生します。
いつものこと、いつもの仕事、慣れているのでついつい流れ作業のようになってしまう。
そこに取り返しのつかないリスクが潜みます。
部品の製造ならば、何万個か、何十万個に一つ不良品が紛れこみます。それを出荷前に止めるのですが、医療行為の場合、施してしまったら取り返しがつきません。
しかし、人間のすることなので、何十万分の一のミスもないと言い切れるでしょうか。
そして、そのミスに対する賠償請求も何千万、何億に上ります。
それは、とても診療報酬と見合うものではありません。
このように、私たちの仕事は、報酬に対する何千倍、何万倍もの責任を問われる可能性があります。しかも、そのリスクを日常的に抱えているのです。

■ビジネスに言い訳は効かぬ

そのリスクは、もちろん顧客自身は背負うことができません。
例えば、人の子供を預かって、もし事故でもあれば、預けた方も、預けられた方も、立ち上がれないほどのダメージを受けます。
だから、プロがそのリスクを肩代わりするのです。
もちろん、間違いを犯さないことが大前提です。
想定外の津波に見舞われて、メルトダウンを引き起こした福島第一原発。
原子力関係の技術者の知り合いに聞いてみたところ、「あの安全対策はあれ以上やりようがない」と嘆息していました。
我々、部外者からすれば、「危険なものを扱うのだから、仕方がないは許されないだろう」と思います。
しかし、現場の人からは、「想定と言っても、どこまで想定すれば良いのか、キリがない」と言う声が聞こえて来ます。
あってはならないこととは思いますが、それが本音でしょう。
原発だけでなく、どんな仕事でも現場の効率と、リスクヘッジとの兼ね合いが問題になります。
リスクヘッジに力が入り過ぎてコストに跳ね返ったり、効率を優先して問題を起こしたり。その中、無理な運行計画で事故を起したバス会社などは、効率優先の弊害の最たるものでしょう。
しかし、対策の軽重に関わらず、事故や問題が発生すれば、私たち事業者には現状回復の責任が発生します。
福島第一原発でも、厳しい状況の中、所員の皆さんがベストを尽くしてくれたからこそ、最悪の事態は避けられました。
「ビジネスには、言い訳は効かぬ。」
それは、プロがリスクを肩代わりして報酬を受けている立場だからです。
業務では毎日リスクと隣り合わせです。
それを深く自覚し、準備を怠らない。そして、事故が発生したら、何としても収拾をさせる。
そんな自覚を、今一度自らに問い直さずにおれません。