今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

アーティスト受難の時代

(写真:生命大進化展 その8)

■ユーチューブバー

最近、「ユーチューバー」になりたい小中学生が急増しているそうです。
「ユーチューバー?、何それ?」と調べてみると、動画投稿サイト「YouTube」を生活の糧にしている人たちだとか。
今まで、「YouTube」は趣味の世界で、いわばロングテールの代表格、誰でもクリエイターになれるけど、実益には結びつかないと思っていました。
しかし、実際に「YouTube」で生活している人もいて、最高ランクは何と年収1億超えだとか。
思わずため息が出ます。
何故なら、我らサラリーマンは、朝から晩まで走り回って、お客さんと上司に気を使い、たまの休みを灯りに頑張っている。それでも、年収1000万ははるか雲の彼方だと言うのに。
それが、サラリーマンのように通勤もしなければ人間関係にも煩わされない、芸能人のようにゴシップ誌に追いかけられず、出かける時にサングラスも不要。また作家のように、編集から締め切りを迫られなければ、評論家から酷評もされない。
しかも、成功すれば収入も良い。
なんと、いいとこ取りの職業でしょうか。

■1億総クリエイター時代

では、この「ユーチューバー」はどのように収入を得ているのでしょうか。
その答えをネットに聞いてみました。
すると「YouTubeアフリエイト」という仕組があることが分かりました。
「YouTubeアフリエイト」とは、「YouTube」にアップロードした動画と一緒に表示される広告が、クリックされる度に広告収入が入る仕組です。
だいたい、100クリックで、2〜5円の収入になるとか。
だったら、今よく聞く「再生100万回」ならば、最大500万円が手に入る訳です。
才能のある人なら、映像クリエーターや、漫画家、イラストレーターの道を進まずに、年に「再生100万回」を2回も達成すれば、たちまち年収1000万ですね。
あるいは、腕に覚えのある人が、高層ビルを綱渡りしたり、スカイダイビングのリアル映像を投稿すれば、注目を集めて良い収入になるでしょう。
以前なら、このように創作で収入を得ようと思えば、出版社に連載や発刊と言う場を提供して貰わねばなりませんでした。
そのため、新人賞とか、あるいは芥川賞のような狭き門を通る必要があったのです。
あるいは、冒険家も、自分の冒険をお金にしようと思えば、スポンサーを必死で探して、放映収入で儲けてもらう代わりに機材費を提供してもらう等の努力が必要でした。
しかし、「YouTube」では、そんな手順は一切不要です。極端なことを言えば、身一つで作った動画をお金にすることができます。
まさに「一億総クリエイター」の時代になりました。

■主張し始めたロングテール

そもそも、「YouTube」は、ロングテールの代表格です。
ロングテールは、WEBでものを売り買いする時代に初めて登場した言葉です。
それまで、私たちが何かを買おうと思うと、対象は店頭に並んでいるものに限られました。
どんな店舗でも、物理的な広さには限界があります。当然、売れ筋だけに絞られて、並ぶことになります。そうすると、どの店舗でも並んでいる商品の傾向は同じで、私たちの選択肢は限られました。
しかし、Amazonに代表されるネット販売では、WEBがそのまま店頭であり、メーカーの倉庫がそのまま商品倉庫です。
そうなると、WEBで店頭販売できる商品数には、限界がありません。
年に一つしか売れない商品でも、欲しがる人がいれば、ネットで注文して購入できます。それをタテ軸に販売数、ヨコ軸に商品数で2次元グラフを描けば、左に売れ筋の山があり、右に行くほど、年に数個の長い尻尾ができます。
これをロングテールと言います。
さて、メディアのメインは、やはりテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、書籍、映画です。そして、放送枠があるので、どうしても提供されるコンテンツは絞りこまねばなりません。
その絞り込まれた舞台に立てる人も限られます。彼はスターと言われ、高い収入を得られるのです。それだけ、スターの座の奪い合いは熾烈で、昨日までいた人が、もう今日はいません。
しかし、本来人間はそれぞれ違った嗜好を持ちます。男なら誰もが勇ましい戦争ものが好きで、女性なら恋愛ものが好き、と言うものでありません。それに、戦争ものが好きでも、人それぞれいろんなツボがあるでしょう。
だから、与えられたテレビ番組や、印刷媒体だけでなく、ありとあらゆるコンテンツから自分にぴったり来るものを選べる「YouTube」こそメディアにおけるロングテールなのです。
しかし、「YouTube」の視聴は無料なので、そこから直接収入は入りません。
「ロングテールでは食っていけない」のご多分にもれなかったわけですが、「YouTubeアフリエイト」により、ロングテールで生きていく人が現われ始めました。
そして、これはロングテールの自己主張の始まりです。

■プロアーティストの価値とは

さて、そうすると、プロアーティストの価値が激しく問われ始めます。
私たちIT業界でも、もはやコンピューターは汎用品、ちょっとした環境の構築や、プログラミングくらい誰でもする時代です。
その時代ににプロの価値は何でしょうね。
より、高い技量や知識でしょうか。
でも、本当に好きなマニアには、叶わないところがあります。
唯一言えることは、私たちプロは、どんなに都合が悪くなっても決して逃げないところが、存在価値です。
それは、お金を貰っているのですから、お客さんの環境がずっと快適に動くよう支援する責任があります。いわば、これがアマとプロの違いです。
しかし、プロのアーティストは、作って提供したら、そこで仕事は終わり。
ならば、アマチュアでも、良い作品を作る人には叶わない気がします。
現に、お笑い芸人の又吉氏が、芥川賞を受賞して、一躍文化人の仲間入りをしています。
ある意味、スキルだけで評価されるので、プロとアマの境目がつきにくい業界かも知れません。
音楽の世界では、「YouTube」の無料視聴に押され、CD売り上げが落ちていると言います。実際、K-POPのアーティストが、自国で商売にならないから、しきりと日本に来ていた時期もありました。
そして、「YouTube」の大量のコンテンツに押されたプロアーティストにとっては受難の時代です。
ただ、「ユーチューバー」とプロのクリエイターの違いは、プロは自らメインストリートに発表の場を求め、厳しい評論にさらされる環境に身を置こうとします。そうして、創作の質を維持できるよう、自ら奮い立たせます。要は、クオリティの維持を条件に、プロとして生きる道を求めるのです。
彼らには、ネットの物量に負けず、いつも高いクオリティのものを提供して貰いたいと思いますし、また、時代が変わってもいつまでも残るものを創作して貰いたいと思うのです。