今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

新しいが故に未熟

(写真:黄金の木)

■未熟と卑下することなかれ

他の人は頑張っているのに、自分はどうしてもペースが上がらない。
どうやったら上手くいくか、やり方も分からないし、道筋も立たない。
そもそも、どこにとっかかりがあるのか。
いろんな足場を探して挑むけれども、見つけたと思った足場は、浅く、もろく、体重を支えられないものばかり。
朝会社に来て、考え込んで帰るだけ。
楽をしている訳じゃない。
頭の中と、心の中は必死にもがいている。
でも、何もつかめないまま、時間ばかりが過ぎてゆく。
こんなことでは、申し訳ない。
皆んなに顔向けができない。
自分は、未熟だ。
自分は、無能だ。
・・・
これは、不慣れな新人さんの話ではありません。
期待されて新しいことを任された人のつぶやきです。彼は、自分を未熟と嘆き、自己肯定感が下がっていますが、果たして、それは彼の本当の姿でしょうか。

■新しいが故に未熟

仕事には二通りあります。
一つは、先輩が頑張って、やり方の道筋を確立した仕事。
やり方も、上手くいく方法もハッキリしているので、後はどれだけ正確に、手早くその手順をこなせるかが大切です。
人のやり方を学び、それを踏襲するのが、とにかく得意な人がいます。まさにその人向きの仕事です。
二つには、やり方も、どうしたら上手く行くかも分かりませんが、それでも挑戦しなければならない仕事。
例えば、今まで会社で前例のない仕事であったり、新しい技術に取り組む仕事であったり。
会社に書式やルールがある訳でもなければ、詳しい人がいる訳でもありません。
だから、やり方に縛られず、とても自由な反面、一から自分で考えなくてはならないからとても難しいのです。
また、難しいが故にある程度の実績を持った人が抜擢されます。
さあ、期待に応えようと勇んで取り組みますが、まるで球体によじ登ろうとするようで、どこに足場があるか、サッパリ分かりません。
時間ばかりを使ってしまうのが申し訳なく、だんだん自分が情けなくなる。
それまで、実績のあった人なら尚更、急に仕事ができなくなったような錯覚に襲われる。
でも、仕事ができないのではない、慣れない仕事は誰でも未熟。
そう、新しいが故に未熟なのです。

■新しいが故に迷わぬこと

新しいことに取り組む人は、何か新たな風を起こそうという気概のある人です。
だから、自ら志願して飛び込む人もいるでしょう。
あの消せるボールペンは、今までのボールペンの概念をひっくり返してしまいました。
それまでは、下書きは鉛筆、清書はボールペンでした。さらにボールペンは誤字の訂正ができないので、間違わないように気を張って書いていました。
修正液や修正テープも開発されましたが、やはり人に出す手紙や、気の張る申請書類では使うのをためらわれます。
それで、私も一枚書くうちに何枚も書き直しをしました。
しかし、この消せるボールペンは、清書であっても後を残さず訂正できるのです。
たちまち、自分の中で手放せない文具になりました。
ところが、これが世に出るまでに実に5年がかかっており、その間開発チームは、ひたすら消せるボールペン作りに励んだのです。
まず、「消せること」の概念づくりから始めて、摩擦熱で消すと言うアイディアに辿り着くまでがたいへんだったでしょう。さらに、常温で定着が良く、持続性もあり、摩擦熱で後も残らずきれいに消せるインクの配合を見つけるまで、何千、何万パターンを調べたか想像もできません。
おそらく、第一線の開発者たちが、チームを組んで何年と取り組んだのでしょうが、先行きの見えない研究開発に途方に暮れたでしょうし、また自分の非力さに悩み苦しんだでしょう。
このように、新しいものを世に送り出すには、開発者のもがき苦しみのプロセスがあります。でも、そこを諦めずに最後まで頑張ってくれたこそ、私たちは多くの便利な道具に囲まれているのです。

■新しいが故に学ぶこと

むしろ、この道はエリートでは進めないかも知れません。
何故なら、すぐに結果を出すことを信条としているエリート社員は、良い結果報告ができないまま、長期間黙々と取り組むことに耐えられないからです。
「あの人、何やってんの?」
「さあ?」
「プロジェクトリーダーと聞くと華々しいけど、なんか閑職だよね。」
周りはそこまで言わないでしょうが、ついついそんな視線を感じて肩身の狭い思いをします。
でも、閑職だろうが、窓際だろうが、その視線に黙々と耐える。
ひょっとして、このまま一生無駄飯を食って終わるのか?
そんな不安に駆られることもあると言います。
しかし、人の視線にも、長い間の基礎研究にも良く耐えうる人なのです。そして、新しいものを生み出すのは、少し第一線から外れた窓際的な人物かも知れません。

私の場合は、そんな大それたことをする訳ではありませんが、巡り合わせ的に、今まで会社でやったことがない仕事が回ってきます。
それで、いつも自分の能力不足にも向きあって苦しい思いをします。
でも、新しいが故に未熟なのだと思えば勇気が出ます。
そして、最近心がけていることは、自分一人で考えないこと。自分一人だと、行き詰まったら、適当な理由をつけて逃げたしたくなりますし、また考えが堂々巡りします。
そこは、人に頭を下げて教えを乞うたり、軌道修正をして貰うべきだと思っています。
新しいが故に未熟、しかし、新しいが故に諦めず、また新しいが故に謙虚に学ぶ。
心がけたいと思います。