今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

制約あるが故の方向性

(写真:秋くれない その1)

■なんでも自由にできたら

妖精が言いました。
「なんでも好きな願いを3つ叶えよう。」
それを聞いて主人は小躍りして、「俺は今とても腹ペコなんだ。大きなソーセージを出してくれ。」と頼みました。
やがて、現れたソーセージに、主人はよだれを垂らして食いつこうとしますが、反対に奥さんが怒り出しました。
「あんた、何バカなことを願っているのさ。本当にしょうがない人だねえ。」
すると、主人はその言葉に腹を立てて、「ええい、うるさい女だな!お前のようなやつは、このソーセージが鼻にくっついてしまえばいいんだ!」と怒鳴り返しました。
あっ!と気づいた時は出遅れ、奥さんの鼻にソーセージがくっついて離れなくなりました。
そして、妖精は言いました。
「願いは、あと一つ、慎重に決めた方が良いぞ。」
あと、一つ、世界一のお金持ちにして貰おうか、王様にして貰おうか。
しかし、奥さんは「鼻のソーセージを取っておくれ、お願いだよ。」と泣きわめきます。
ソーセージを取ろうと思えば、せっかくの最後の願いを使わなくてはなりません。
最初は、奥さんの願いを無視しようと思っていた主人でしたが、だんだんとあまりに泣きわめく奥さんが不憫になって、最後にこう言いました。
「じ、じゃあ、あいつの鼻のソーセージを取ってやってくれ。」
これで、せっかくの願いも3つ全て終わり。
何も手に入れることはできませんでしたが、二人はこの後もずっと仲良く暮らしましたとさ。

■自由なるが故の不自由さ

なんでも3つ、好きな願いを叶えよう。
昔ならランプの巨人、最近ならドラゴンボールですか。
いきなり願いが叶うと言われると、大抵つまらないことをお願いしてしまうようです。
ちなみに、ドラゴンボールで叶えた最初の願いは、「ギャルのパンティが欲しい」だった気がします。
じゃあ、もし自由に使ってよいお金1億円があったらどうします?
「あなたを見込んで1億円を渡すから、何かためになる使い方をして欲しい。」
「何か、使い方の条件はないのですか?」
「ありません。全てあなた任せです。」
正直困りませんか?
ならば、スペースXに行って宇宙旅行を申し込みますか。
でも、ためになる使い方、と言われたし。
ためになるねえ・・・自分はとてもそんな責任を負えないから、ポンと団体に寄付して終わる気がします。
確かに、世のためになりましたが、あまり建設的でないですね。投資家もガッカリ肩を落とすでしょう。
しかし、こんなこと会社ではあるんですよ。
例えば、次世代のビジネスを考えるために、あなたに予算を取ったから「なんでも良いんだよ。好きにやりたまえ。」
好きにと言われても、責任のあるお金だし、よほどの人でもなければ扱いに困ります。
自由に、が却って不自由さを生んでいる好例だと思います。

■有難い制約

対して、制約がいろいろ付くと、ずっとテーマが考えやすくなります。
まずは予算、相手、業界、そして運用。
お金の使い方にいろいろと条件がつき始めると、自由度が失われる分、その条件を通すために選択肢が絞られます。そして、自然と道筋が決まってきます。
自分は長らく、お客さんの要望を聞いてシステム開発を行ってきました。
何がしたいか、予算はどれくらいか、相手があることなので、そこにはいろんな制約が発生します。
当然、そこを通すためには、いろいろと知恵をしぼることになります。遊び、つまり自由度がない分、窮屈かも知れませんが、その分仕事に迷いがありません。
制約と聞くと、私たちを縛り付けるもので、ない方が良いものと思われがちですが、あればあったで非常に助かります。
わかりやすく言えば、報告書類一つ取っても、何を書いたら良いかキチンと書式が決まっていれば楽ですよね。
書式とはいわば制約なので、報告内容によっては窮屈かも知れませんが、その分迷いがないので文書作成を効率化することができます。

■制約あるが故の方向性

もし、うちの前に世界最大級のショッピングモールができたら。そして、取り扱い点数100万点。その中から一番自分に合う服を探しなさい。
そう言われたら、どうでしょうか。
そりゃ、最初は嬉しくて勇んで日参するですょう。しかし、だんだんあまりの物量、つまり選択肢にうんざりして、疲れてきませんか?
そして、少し足が遠のくかも。
それが、今現実になっています。
分かりやすく言えば、今Amazon等のネットのモールがその状態です。
Amazon直営の倉庫だけでなく、マーケットプレイスまで含めれば、今世界中のありとあらゆる場所が倉庫であり、ショーウィンドウ状態です。
ちょっとした物を買うにも、検索をして物凄い数、たとえば10万件とかヒットしたら、それを見ているだけで何日も費やします。
そこで、ネットモールはいろんな知恵を搾って私たちに合う商品を提案してきます。
たとえば、予算の範囲内、安いもの順、オススメ順、人気順、傾向が似ている他のユーザーの購買履歴から等、いわゆるレコメンドです。
これは、モール側が独自に制約をかけて、膨大な商品点数から私たちに合うものを絞りこんでくれているのです。
そうして初めて私たちは、絞りこまれたものをもとに、自分で判断して購入ボタンを押すことができます。
そうです。
選択肢が多いことは、自由である反面苦痛なのです。ですから、これからは抽出技術を競う時代と言えるでしょう。
私たち自らが行動する場合にも、お金がない、時間がない、人手がない、理解が得られないと制約があり、それを嘆いてばかりです。しかし、同じようにむしろ制約があることは有難いことです。反対に制約を味方につけ、しっかりとした方向性を定めるくらいになりたいと思います。