今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

ねたみ、そねみ、怨みが人生を複雑にする

(写真:秋のモスキート)

■2匹のネズミ

田舎のネズミがある時、従兄弟のネズミに招かれて都会に出掛けた。
田舎ネズミを出迎えた都会ネズミは、心から彼を歓待し、都会にはどんなに美味しいものがあふれているかを自慢し、またいつも麦や野菜のクズしか食べていない田舎ネズミを哀れんだ。
都会のご馳走の期待で胸を膨らませた田舎ネズミ、「さあ、さっそく食事に出掛けようか」と都会ネズミに誘われて、巣穴をから人間の食堂へと出た。
「シーッ、静かに。あそこにネコがいるだろ。ヤツに気づかれたら命がないからね。あと、人間に見つかったら、どんな目にあわされるか分からないよ。」
そう都会ネズミに警告された田舎ネズミ、すっかり怖気て田舎に帰ると言い出した。
「えっ!まだ来たばかりで、何もご馳走を食べていないじゃないか?」
「いや、僕にはネコや人間に怯えながらご馳走を食べるなんてとても無理だよ。確かに田舎には、贅沢なご馳走はないけど、安心してお腹いっぱい食べられるよ。僕には、その方が良いのさ。」
そう言って田舎にネズミは、早々に都会ネズミの元を辞したと言う。

■シンプルライフ

有名なイソップの「二匹のネズミ」である。
粗末だけれど、平穏無事に安心して過ごせる田舎を選ぶか、贅沢だけれど、いつも身の危険を感じて、ドキドキしながら都会で過ごすかは、その人の価値観だろう。
現代に例えるならば、決して豊かではないが、細々ながら生活に困らない収入と、自分を大切にしてくれるお客さんに囲まれて過ごす一生。また、地位もお金も、名誉にも恵まれているが、ライバルとの競争や、下からの突き上げと上からのプレッシャーに常にさらされている一生。そのどちらを選ぶかに等しい。
我々の時代は、出世して贅沢な生活をするのを価値としている人が多かった。そして、それで受けるストレスもプレッシャーも、言わば男の甲斐性くらいに思って、互いに「胃が痛いよ」とストレス自慢をしている世代である。
対して、今の若い人は「寡欲世代」と言われ、あまりモノの所有や地位に執着がない人が多いと言う。
確かに、それでは消費も低迷するし、これから世代の日本人が競争力を失うから、マスコミは徹底的に揶揄するが、寧ろ田舎ネズミ的な若年層の方がシンプルライフである。

■シンプルライフを妨げるもの

「戦後の日本に貧乏と言う言葉はなかった」
戦後を経験した高齢者から、そう言われたことがある。
特に、空襲で焼け出された都市部の人は、財産も何も全て焼かれて、みなゼロからの出発。子供たちは、みな垢で汚れ着古した服だし、お昼のお弁当も粗末な麦飯ばかり。
でも、それで自分が惨めだとか、貧乏だとか卑下はしなかった。貧しいもの同士、隣近所で助けあって、それなりに過ごしやすい時期だったと言う。
もちろん、生きるか死ぬかの思いをした人も多かったろうから、むしろこう語れるのは一部の恵まれた人だったのかも知れない。
でも、着た切りの服で恥ずかしいとか、麦まんまの弁当で惨めだとか言うのは、後年もっと日本が豊かになってからの話である。
だから人間は、自分の置かれた環境、所有しているもので満足できれば、こんな楽なことはない。
我が家の一人娘は、兄弟がいないし、女の子だから余り勉強の出来不出来も言われない。兄弟や周りと比較して落ち込むことがないから、その意味では楽だろう。
独立自営の人は、全て一人でこなさなくてはならないから肉体的にしんどくても、同じ社内にライバルもいなければ、よく出来て地位を脅かされる後輩もいない。上司から他の社員と比較され、能力不足を責められることもないから、精神的には楽な面があるだろう。
今の自分でそのまま満足できれば、人生は至ってシンプルになる。
それをさせないのは、他人と比べて落ち込んだり、自惚れたりする愚痴の心が原因である。

■愚痴の心

愚痴とは、クドクドと、どうにもならないネガティヴなことを口にする意味で使われる。
しかし本来は、108ある煩悩のうち、特に大きなものの一つである。
愚痴とは、分かりやすく言えば、ねたみ、そねみ、怨みの心を言う。
優れた相手をねたむ、自分より良いものを持っていることをそねむ。思い通りにならないことを相手の原因にして怨む。
だが、よく考えてみると、この心は相手に原因がないことで起こしている。
仕事がよくできて出世するのも、キレイな奥さんに恵まれているのも、比較されて自分が惨めな思いをするのも、相手が悪いのではない。言わば、自分の努力不足が招いたものである。怨みは怨みでも、逆怨みの類である。
相手は、自分のすべきことを実直にこなして、それが評価され出世した。対して、自分は相手ばかり気にして、相手が失敗すれば気をよくしてサボり、相手が成功すれば失敗することをひたすら願う。自分がおろそかだから、立派な仕事をなどできはしない。
愚痴は人間の本性であり、無くすことは無理だが、自分の与えられている環境、仕事に実直に向き合い、他人のことに振り回されないシンプルライフを送りたいと願う。