今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

間違わない世界

(写真:夏の日のグランスカイ その2)

■スーパーAIの奇跡

機械が人間の仕事を奪う。
確かに、オフィスオートメーションの導入で、工場で働く工員さんの数も減り、仕事の質自体変わった。
危険な場所での仕事や、力仕事は機械にお任せ。後、人間は高度な判断が必要な仕事や、クリエイティブな仕事に特化すれば良い。

しかし、技術の進歩により、思考、判断、創造の分野でも、機械が人間を凌駕しようとしている。
思考するスーパーコンピューター、IBMのワトソン。チェスの世界王者を破り、クイズ王すら倒した。
人工知能と機械学習の勝利である。

他にも、人工知能と機械学習でこんなことが現実化している。
アメリカの法律事務所では、係争案件毎に、コンピューターに過去の判例を抽出させている。しかし、本来それは人間の、そして弁護士の仕事である。ならば、代わりに人間は何をしているのか。
実は、コンピューターが選んだ判例が適切か、人間の目でチェックしているのだ。立派な資格を持った弁護士が、機械のアシスタントになっている。
そして、係争能力の高い一部の弁護士だけが、機械の力を借りて法廷に立つエリートとなる。弁護士事務所内での酷いヒエラルキーが出現している。
しかも、機械のアシスタントに陥った弁護士たちに自分で判例を抽出させて、あまりに機械とかけ離れた結果だった人は解雇の対象になると言うのだ。
完全に機械と人間で、支配するものと支配されるものとが逆転している。

また、アメリカの有名音楽オーディションサイト。
昔は、デビューを夢見る若者達は、デモテープを持ってレコード会社を回った。
最近は、このサイトにアップロードするだけである。
その総数何10万とも、何100万とも。
当然、人間では聴いていられないから機械に判別させる。
過去にヒットした大量の楽曲の曲調、メロディライン、歌詞等をデータ化して、ヒットする曲の基準を作る。
この基準で、全曲を採点させ、高得点の曲だけを音楽プロデューサーにつなぐと言うわけだ。
ただ、幸運にして一曲目はリリースできたとして、二曲目以降もまた機械で採点される。
そして、ここでも高得点を取らないとリリースは覚束ない。
レコード会社は無駄な投資を避けられるから有難いだろうが、いっそコンピューターに曲を作らせたら良いのではないか、と言う気分にもなる。

■間違わない世界に生きる人たち

機械に投入する大量のデータ、それを人間で言えば、経験に当たる。
経験を積むことのメリットは、事前に予測できるようになること。
例えば、テレビで紹介されていたある高収益なスーパー。
ここの社長は、30年間ひらすら生鮮品の販売数を手書きで記録し続けた。
すると、こんな天気の日はイカがこれくらい出る。一年のこの日にはサンマがこれくらい買われる、と正確な数字まで予測できるようになった。
すると、仕入れ不足で売り逃がしもなければ、仕入れ過剰で廃棄もない。そして、大手スーパーのひしめく中にあって、堂々と高収益を継続している。
これは、経験の力である。

しかし、これを機械にさせると格段に能力を発揮する。
それは、人間ならば、世代や担当が変わった時、前任者の経験を100パーセント引き継ぐことはできない。しかし、機械ならば、データセンターに接続しさえすれば、引き継ぎは瞬時に完了する。
しかも、経験値、すなわちデータは1店舗や10店舗だけでなく世界中から集約される。その量、数テラバイトとも。
これを機械独自のアルゴリズムで解析し、トライアンドエラーでどんどん精度を高める。
しかも、それは24時間365日間である。
そして、人間の経験知すら凌駕する機械学習の演算知が出現する。

そうしたら、世界はどうなるだろう。
人間は、間違えたくないと願う。
なぜなら、間違えたら不幸になるから。
相性の合わない相手と結婚したら幸せになれない。我慢していくにも限度がある。別れるにもいろいろたいへん。
そもそも、いい子がいても、彼女にアタックして芽があるのか、ないのか。ないなら、最初から恥はかきたくない。
でも、少しでも可能性があるなら、一番成功確率の高い方法を伝授して欲しい。
あるいは、どんな仕事についたら幸せになれるか、出世できるか。あと、同じ仕事でも、お客さん毎に一番確率の高いアプローチは?
道一つ走るにも、良かれて思って選んだ道が渋滞したり。
マンションを買って、念願の夢が叶ったと喜んでいたら、偽装されていたり、傾いたり。
食べるもの、生活習慣は長い間かからないと結果がでない。肺がんになると分かっていたら、絶対タバコなんか吸わなかったのにい、と後悔する。

だから、皆んな占いを頼ったり、運気の上昇を願ったり。でも、それは気休めでしかないことは分かっている。
ああ、未来が分かっていたら、絶対間違えないのに。
その願いを人工知能と機械学習がかなえてくれる。
この世界では、「リア充」に類する言葉は死語。なぜなら、相性バッチリで、絶対にうまくいく恋愛相手を機械がチョイスしてくれるから。そのもとになるのは、毎日自分たちが大量に記録しているライフログ。
この世界では、職業の選択で悩むことはない。その人が一番生涯年収が多くなる仕事や会社を機械が教えてくれる。生涯年収が多いと言うことは、生産性が一番高いことに等しいから、世の中全体が豊かになる。
また、日々の生活習慣、摂取した食べ物、ゲノム情報をもとに、ガンや心臓病、脳梗塞などありとあらゆる疾病の発症リスクのゲージが上がったり下がったりする。
まさに医者要らずの世界。

つまりこの世界では、間違えると言うことがない。間違えないのが当たり前の世界である。

■間違える世界に生きる僕たち

対して、我々が生きているのは、まだ間違えて当たり前の世界。
道を歩けば意に反して雨に降られる。
車に突っ込まれて大怪我をするかも知れない。

好きな子ができた。
どうする?
時間が経っても何も変わらないなら、いっそだめもとでアタックだあ。
ああ、やっぱりダメだった!
ならば、今日はしこたま飲んで憂さを晴らして、まだ明日から頑張ろう。

何年やっても上手くいかない仕事。
そもそも向かんのかしら。
皆んなそんなことを考えている。
しかし、だからといってスッパリ転職できないのは、上手くいかない理由が、会社の所為なのか、自分の能力の所為なのか、はたまた自分の努力不足なのか、見極めがつかないから。それに、転職のサクセスストーリーもごく限られた話だとなんとなく分かる。
間違いか成功だったか分かるのは、意外と会社を去る日かも知れない。

今はまだ我々は間違えてばかりいる。
いや、ひょっとしたら間違える贅沢があるのかも。30年後の人たちは、そう言って僕らを羨ましがるのかも知れない。
間違えば、ひどい目にも会う。
下手すれば、噴火や事故に巻き込まれて命を落とす。
しかし、反面、想定外の出会いもある。
間違えたことで生み出された発明品や料理も多い。
もちろん、周りが間違えない中で、一人機械を拒絶して間違えるのはシンドイから、きっとその時代には自分も間違えない方を選ぶ。
だから、しばらくは間違うことの贅沢を愉しみたい。