今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

あるうちは、当たり前と思っているが別れてみて泣く時がある

(写真:積乱雲)

■もう、顔も見たくない

友人のぼやき。
「この間、マダム連(奥さんたち)と同席することがあってさあ。
そしたら、言うの、言わないの。σ(^_^;)
旦那のこと、さんざんこき下ろすのね。
もう、顔も見たくないとか、今生限りのご縁にして欲しいとか。
俺もいずれ、そう言われるのかと思えば、なんか夢も希望もなくてさあ。」
かわいそうに。
まだ、年若い彼は、新婚ホヤホヤだったのだ。

日本の男子は、昔から人前では奥さんを褒めない。
携帯会社のCMでも、鬼と盛り上がっていた桃太郎がつい失言。
鬼「あと、鬼嫁。」
桃太郎「どこの家も同じだなあ。」
かぐや姫(奥さん)「なにっ!」

家で二人の時は、結構ラブラブの癖をして、外では貶す。
「女房なんか目じゃないぜ」って、格好いいところを見せようとする。
でもその本質は、「女なんかキモ!」って言う小学生であったり、「俺も昔は悪かったなあ」とありもしない武勇伝を語る若輩ものと、なんら変わるところがない。
要は、虚勢である。
あるいは、子供っぽさが永久に抜けないと言うことか。

しかし、女性の愚痴は、結構本音なんじゃないかと思う。
女性は、優しさや、たおやかさ、美しさを求められるから、日頃は心の奥に潜ませている思いが、いざ同族ばかりの気安い場所で噴出する。
いやはや、女性は怖い。
そして、男など敵でない。

■名医の処方

もう顔も見たくない。
そう思える原因の一つが、「ずっとこれからも一緒」「いつまでこれが続くのか」のウンザリ感である。
確かに、先が見えないと人間は、何倍も辛く感じる。

こんな話がある。

ある夜、町で評判の名医の戸を叩くものがいる。
(こんな遅くに、急病人か)と案じて、戸を開けてみると、そこには、ある大店の嫁女が立っていた。

とりあえず、彼女を奥に上げた名医に向かって、嫁女は「どうした」と聞かれる前に決死の形相でこう訴えた。
「先生、今日はどうしても聞いてもらいたいお願いがあって参りました。お母さんに盛る毒をいただきたいのです。」

このお店、姑と嫁が犬猿の仲と聞く。
さては、こじれにこじれたか、と腹に落ちた。
しかし、まさか毒を出すわけにもいかぬ。かと言って、そのまま帰せば自害しかねない。
はたと困って、一計案じた名医は、嫁女にこう言った。
「承知した。毒は渡そう。
しかし、すぐ姑にコロリと逝かれたのでは、あなたに疑いがかかる。私も捕らえられて獄門じゃ。
だから、すぐ死なぬように、少しづつ効くように調合した。ちょうど30日目にコロリと逝くようにしたから、毎日夕食どきに一包ずつ飲ませるのじゃ。」
「ありがとうございます。」
そう礼を言って帰りかける嫁女に、重ねて名医は諭すように言った。
「どうせ30日の辛抱じゃ。その間、疑いがかからぬように、肩も揉み、優しくして、よく尽くすのじゃぞ。」

それから、嫁女は、どうせ30日の辛抱と思い、名医言う通りに姑に優しくし、よく仕えた。
そして、30日目の夜。
いつも通り、夕食どきに薬を飲ませ、肩を揉んでやっていた嫁女に、姑がいきなり頭を下げ、手をついた。
そして、驚く嫁女にこう告げた。
「今日は、お前に謝らねばならないことがあります。
いままで、お前にキツく当たってきたのは、早くここの家風を身につけて貰いたかったからなのです。
ところが、この一カ月でお前は見違えるほどに変わった。よく気がつくようになった。もう何も言うことはありません。私は、全てをお前たち夫婦に任せで隠居します。」

自分の心得違いに愕然とした嫁女は、名医のところに駆け込んだ。
「先生、一生のお願いでございます。早く、早く、お母さんの毒消しをください。」
涙ながらに訴える嫁女の嘆願に、名医は豈図らんや、高笑い。
「ハッハッハ、心配ご無用、あれはただのうどん粉じゃ。」

■しばらくのご縁と思えば

ずっと続くと思うから、ウンザリする。
ずっとあると思うから、粗末に扱う。

結婚式では、「永遠を誓う」と言うけれど、そんなのは言葉だけのことである。
いかに仲睦まじく、一生添い遂げる夫婦でも、一緒に棺桶には入れない。
必ず、生き別れ、死に別れする時がある。
しかも、それは往々にして突然来る。

憎らしい亭主と思っていても、亡くなってみると、どれだけ助けられていたか、守って貰っていたか知らされる。
自分も、父親に対して、生きている時は酷かったと思う。雑に扱う家族に対しても、よく耐え、最後まで自分がいなくなった時のことを考えていた。
だから、今は、申し訳なさはあっても、恨みつらみ、侮蔑の感情は一切ない。ただ、偉い人だった、の思いだけである。

残念ながら普通に一緒にいる時は、それが見えない。
ずっと、この状態が続くと思いこんでいるから、ただウンザリ感だけである。

親も、夫も、妻も、上司も、友人も、全てしばらくのご縁である。
自分の地位や名誉、健康や、命ですら、しばらくの持ち物である。

あるうちは、当たり前と思っているが別れてみて泣く時がある。
今に、その時をとり詰めて、優しく、大切に、真面目に生きたい。