傷のフレーム
(写真:龍が如く)
参考:ダニエル・ピンク 『人を動かす、新たな三原則』より
■スイカの美味しい食べ方
スイカには、お塩が添えられている。
なぜ、塩がついているのか。
それは、言わずと知れた、ふりかけて食べるためである。
しかし、まだ幼い子供の前で、スイカに塩をかけた時、不思議そうな顔をされた。
「なぜ、甘いスイカをわざわざしょっぱくして食べるのか?」と。
ならば、食べ比べてみれば分かる。
塩のかかっているスイカと、かかっていないスイカ、どちらが甘く感じた?
■甘いばかりじゃ味が出ぬ
あえて言うまでもない。塩をかければ甘みが増す。
もちろん、かけ過ぎたら台無しだけれど、多少のしょっぱさは、かえってスイカの甘みを引き立ててくれる。
甘さだけでは、本当の甘みを感じられないのが面白い。
しかし、最初にこれを思いついた人は誰なんだろうな。
よく映画やドラマで、ハンデを抱えた主人公が登場する。
順風満帆、五体満足のヒーローも結構だか、やはりハンデは人物の魅力を引き立てる。
ハンデヒーローの代表格は、座頭市、盲目である。あと昔、中村敦夫主演で、足が立たず、奥さんに手押車に乗せて貰って、拍子木をヌンチャクのように振り回して敵を倒す時代劇があった。
子連れ狼は、3歳児を連れた流浪の刺客。ただでさえ、子連れの男性はたいへんだが、それで刺客までこなしているのだから、本当にご苦労さん感が出る。空前のヒットの理由は、一にも二にも大五郎だろう。
「頑張れベアーズ」のピッチャーはアマンダと言う女の子。一番の花形であるピッチャーの座を女の子に持っていかれているので、他の少年たちにイケテナイ感が漂う。
テータム・オニール主演のアマンダも、女の子と言うハンデを抱えて「女のクセに生意気だ」とか言われて歯ぎしりをする。
「そう言っていられるのも今のうちよ」
そうネジを巻いて相手の少年がバッターを次々に打ち取るから、見ていて胸がすく。
このアマンダが「頑張れベアーズ」の最大の魅力なのは間違いない。
あと、耳の聞こえないヒーロー、口のきけないヒロイン、もといじめられっ子の格闘家。
父子家庭の健気なヒロイン。
一つハンデを背負わせると、人間的な魅力が何倍にも感じられる。
スイカに塩の類である。
■玉の傷に効果あり
想像して欲しい。
着物で正装したあでやかな女性。
書道の後なのか、頬に墨がついている。
そのようなシチュエーション、妙に男心をくすぐられないか。
寸分の隙もなく、綺麗なだけの女性より、玉の傷の頰の墨が何倍も彼女の魅力を引き立てる。
おそらく、我々自身のプロモーションも同じだと思う。
最近、同僚とは「『何でもやります』は禁句にしよう」と申し合わせた。
「何でも」では、僕らの価値がフラットに映るし、「ここに頼もう」と言う魅力が出ない。
「これはお受けしかねます」であったり、「このようなお客様には合いません」であったり、正直に傷を付け加えると不思議に魅力が増す。
こちらの条件をクリアできたところには、得難いパートナーと感じて貰えるのではないだろうか。
セグメンテーションにもなるし、私一人にあった業者さん、とのプレミア感も出る。
だからと言って、弱点ばかり晒すのは、露出狂よろしくいただけないが、ワンポイントの傷は意識して使いたい。