今日学んだこと

生きることは学ぶこと。オレの雑食日記帳。

自己否定スキル

(写真:夕景 その2)

《上手く行かない原因は?》

「ちゃんとやってる?」
「はい、ちゃんとやれてると思うのですが。」
「でも、努力の割には結果出せていないよね。」

誰でも、上の人とこんな会話を交わした経験はあると思う。
本人なりに一生懸命に与えられた課題に取り組んで、何とか突破しようと頑張るのだけれど、ひたすら突進を繰り返しても一向に状態の変化は現れない。

画期的な製品を生み出そうと努力してはいるが、どこか既存品のコピーみたいになっちゃう。新しい市場に参入しようと頑張っているのに、そこへ入る為の手づるがなかなか見つからない。
時間ばかり消費して、「給料ドロボウ」なんて言われやしないか、いつもビクビクヒヤヒヤ。本人はそれでも真剣に頑張っているから、ますます痛々しい。

《見えているようで見えないもの》

そんな時、上司や同僚の言葉が思わぬ道を開いてくれることがある。

「なんだ、いいとこまで来てるじゃん。あとは、ここを突破すればいいだけだろ?。まともに行っても難しいなら方向転換して、こっちから攻めたらいいんじゃない。」
「そうですね。有り難うございます。」

それで一気に気が軽くなって、前に進めることが殆ど。
そんな時、僕らは素直に思う。
「いつもやっている僕らですら見えないことを、上司の◯◯さんはよく分かるなあ。さすが、上の人だけあって凄いなあ。」

しかし、上の人だからこそよく見えると言うのがホント。
と言うのも、一生懸命そのことに打ち込んでいるのは、同時に視野を狭めていることでもあるのだから。
例えば、よく遊園地にある迷路、中に入っている人は、自分の位置が分からなくなってクルクル回ってしまう。でも、隣の建物の二階から見れば、もう出口に近いのに同じところで引っかかっているのがよく分かる。
「そこ、左じゃなくて、右だよお。」と声をかけると、案外すんなりと抜けられる。

目の前の仕事に一生懸命になっている人は、目の前に高い壁を立てているようなもので、見えるはずのものが見えていない。でも、それは人間の性質上仕方ないのであって、ダメな自分と気に病む必要はない。
むしろ、そのために組織に上司がいる。上司とは、二階から迷路を見下ろして、適切に進む方向を教える人。
案件から離れている立場だからこそ、僕らの袋小路がよく見える。だから、上司は尊敬しても、必要以上に能力差に悩む必要はない。
また、もし自分が指導する立場だったら、良いコーチングができたことを鼻にかけるのも間違い。

上司と話し辛かったら、同僚でも良い。後輩でも良い。
でも、「俺のやってる案件こんなにたいへんなんだよ〜。」と自慢の愚痴に仕立てて、後輩の前で披露すると、「先輩、こうしたらもっとスムーズに行きますよね。」と思わぬ突っ込みを受けるから要注意。
しかし、それすら卑下する必要はない。なぜなら、後輩と言えども、離れている方がよく見えるのは当たり前だから。

むしろ、指摘覚悟でどんどん意見を求めた方が楽だし、早い。プライドは二の次。

《自己否定スキル》

昔の落語で、大岡越前のお白州に証人として連れて来られた子供が、奉行にタメ口をきいて怒られるシーンがある。
「これっ、お白州なるぞ。そのような口をきくでない。」
役人にたしなめられながらも、子供は生意気にもさらに言ってのける。
「なんだい、偉そうに。お奉行様って言ったって、あんな高いところから見てれば何でも分かって当たり前だい。それをさも偉そうにお裁きをするなんて、笑わせらい。」

「上から見てれば何でも分かる」
凄い理屈だなと思ったけど、なんとなく分かる。
頭に血が上っている当人同士の係争を解決するには、少し離れたところから双方の意見を聞いて調整をするのが一番だからね。
しかも、お白州や奉行の権威があればまさに鬼に金棒。

つまり、人間は自分で自分のことを正しく分析したり、方向転換するのが苦手だと言うこと。
しかし、本当にできる人は、自分で自分を方向転換できる。言わば「自己否定スキル」を持っている。
(ただし、これは自分の造語なんだけど。)

「自分はずっとこうだと思っていたけど、本当だろうか。」
「自分は、これがお客さんのためになると思ってきたけど、本当にベストなのかな。なんとなく、馴れ合いでそうなっているだけじゃないか。」

自分でこれを回せるようになると、かなり強い。
自分でどんどん自己否定して進めるから進化がもの凄い早い。まるで、イメージの中だけでスパーリングして、それが実戦経験のように蓄積できてしまう格闘家のよう。
ただ、時に暴走して、周りがついていけなくなることもあるので、一歩間違えたら孤高の天才になるのかな。

もっとも、自分にはそこまでの才能も、スキルも備わっていないことを自覚しいてるから、やはり他人にぶつけて否定してもらうのが良いかも。
臆面もなく、人に晒してダメだししてもらうのも才能かな。
名付けて「ダメだしされ力」なんてね。