今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

未来の在り処

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(写真:月にむら雲)

『破壊的イノベーションは、まず企業の殻や文化を破壊する』

まず、自分自分を疑ってみる。
今の自分自身の延長に未来はあるのか?
自分自身、あるいは自分にとっての資産(知識、経験、成功法則)を否定しなければ未来はないのではないか。

個人も企業も、型を持ちます。
それは、若い頃から時間をかけて積み重ねてきたものです。
最初は当然上手くいくはずがない。
上手くいかないけれど、少しずつやり方を変えてみて上手くいけば、そちらに軌道修正をする。そうして、自分なりに結果を出せる型を作っていきます。

その型こそが、個人、ないし企業の資産であり、何十年かはそれで食べていくことができます。
しかし、最近、その型が通用しない事態に直面して皆んな戸惑っています。

山口県、旭酒造の日本酒『獺祭』。
他の日本酒に比べ少し割高ですが愛飲家は多く、海外でも高い評価を受けています。
さぞや、名のある蔵元が、長い伝統で培った酒造りの粋を尽くして造っていると思いきや、『獺祭』の成功は伝統の否定によって生まれたと言います。

きっかけは、旭酒造が杜氏に辞められて、酒造りに窮したことからです。
杜氏とは、いわば酒造りの最高責任者。酒造りの総指揮から、工程管理、品質保証まで行います。蔵元の酒の良し悪しは杜氏によって決まるとも言えます。
その杜氏にいなくなられたのです。旭酒造はさぞや困ったでしょう。

しかし、旭酒造の社長はこれを好機と捉えました。
実は、社長はずっと杜氏のやり方に疑問があったのです。
社長に言わせれば「杜氏は手抜きの天才」だとか。
酒造りは気候や原料の米の品質に左右されるもの。しかし、酒は蔵元にとっては唯一の収益源です。だから、年によってバラつきが出るのを極力抑えなくてはなりません。
すると、より高い品質の追求より、全体の品質を落とさないように手堅くまとめようとします。
それを、言葉は悪いですが、社長は「手抜き」と表現するのです。

社長は、杜氏がいなくなったのを機に、酒造りの工程を機械とコンピューターによる管理に切り替えました。
米を仕込んで醗酵させる過程に全てセンサーを取り付け、湿度や温度、水分量と酒の出来不出来の相関関係をデータとして蓄積しました。
当然、それだけで杜氏が磨いた酒造りのノウハウに勝てるはずが有りませんが、何年も試行錯誤を繰り返し、データが蓄積されるに順い、だんだん酒の品質が上がってきました。
そうして造られ、満を持して発表した『獺祭』は高い評価を受けたのです。

これは、まさしく業界の破壊的イノベーションです。
今まで、機械の入り込めない典型のように思われていた日本酒造りの現場に杜氏を置かず、機械とコンピューターでそれ以上の結果を出したのですから、業界の有り様すら問うような出来事です。
破壊的イノベーションが、会社の殻も、文化も、伝統的成功パターンすら破壊してみせた好例です。
おそらくこれが先例となって、地元の高級酒が大規模な工場で造られる時代が訪れるでしょう。

これからも、未来は今の延長にないことが分かります。
確かに、自分が長い間培ってきたものを否定するのは勇気がいります。
しかし、有史以来、人間はそのようにして進歩を続けて来たのです。
既存の成功体験にしがみついて一生終わるより、せめて一歩でも未来に近づきたいと願います。