今日学んだこと

分かっていることは書かない。分かっていないから書いて学ぶ。だから「今日学んだこと」なのです。

コトづくり

(写真:風雲急の予感)
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日本のお家芸は、製造業。
漫画、アニメが世界的に評価されていると言っても、観光立国を目指していると言っても、産業規模で言えば圧倒的にメインは製造業です。

ソニーのトランジスタラジオ、ウォークマン、トヨタの自動車、ホンダのバイク、シャープの液晶テレビ・・・等々、一時期世界を日本の技術が席捲しました。
曰く、「ジャパン アズ ナンバーワン」。
日本の製品が世界に溢れ、それまでの欧米メーカーの市場を塗り替えていく様は実に痛快でした。

ただ、昨今は、ソニーの赤字決算に象徴されるように、日本の製造業の苦戦が続いています。液晶テレビのトップブランドとして知られたシャープの亀山工場も、今ではスマートフォン向けディスプレイの製造が主になっています。
果たして、この苦戦は何が原因なのでしょう。

まず、すぐに思いつくのは、かつての日本の成功モデルを、中国、韓国のような新興勢力にそっくり真似されているということです。
例えば、トヨタ自動車は、それまでの、高価格、低燃費のアメリカ車に、低価格、高燃費の車で挑戦し、不動と思われたビッグスリーをトップの座から引きずり下ろしました。労働者たちがトヨタ車をたたき壊すジャパンバッシングのパフォーマンスがしきりと報道されていたのもこのころです。
それは、ひとえに日本企業が、欧米に比べて人件費の安さと、技術力高さを武器にできたからです。

ところが、その技術力と、特に人件費の優位性を武器に、今度は日本がアジアの新興国に攻められています。
自動車はまだしも、例えば今使っているパソコンを考えてみてください。どうですか?ACERやLENOVOのようなアジアのメーカー製ではありませんか?それともDELLやHPのような、アジア地域の安い人件費で作られたパソコンではありませんか?
消費者の私たちからすれば、選定の基準は価格と品質です。「日本人は日本製品を買おう」というスローガンは関係ありません

でも、技術力なら負けていないのではないでしょうか?
ところが、コモディティ化(均質化、平均化)と言う言葉に象徴されるように、前は独自技術で差別化できていたプロダクツが、どんどん普通に手に入る部品で代替されています。
例えば、自動車の内燃機関が、電気自動車のようなモーターエンジンに代替されたら、自動車メーカーの優位性は失われるでしょう。
つまり、かつて日本が欧米諸国に勝ったビジネスモデルで、今自分たちが急速に追い上げられ、窮地に立たされているのです。

もう一つの苦戦の原因は、先ほどあげたプロダクツのコモデティ化によるものです。
スマートフォンやタブレットのような高機能デバイスにしても、実態は普通に手に入る汎用部品の寄せ集めです。少し腕に覚えのある会社ならアップルの向こうを張って作ることができます。
この時代、技術的優位性は、必ずしも市場での優位にならないのです。

ならば、なぜ、iPhoneはこれほどまでに大ヒットしたのか?
それは、iPhoneの価値は、端末そのものでなく、それによって実現されるユーザー体験(ユーザーエクスペリエンス)にあるからです。
iPhone自体、ディスプレイ、カメラ、スピーカー、そして終了ボタンという至ってシンプルな端末です。昔のトランジスタラジオよりシンプルかも知れません。
しかし、その端末にアプリをダウンロードすることにより、端末の可能性は無限に近く広がりました。ラジオ、本、音楽プレイヤー、カーナビ、ヘルスケア、そしてゲーム機。
その体験そのものが、iPhoneの価値なのです。

日本の「失われた10年」と言われる期間に、やたら叫ばれるようになった「モノづくり」と言う言葉は、カラ元気でも出して製造業の失地回復をしようとする気持ちの表れでしょうか。
しかし、コモディティ化の進んだ昨今、「モノづくり」にばかり固執するのは危険です。IT業界にしても、かつて花形だったネットワークやサーバーの技術者が、簡単にクラウドによって代替される時代です。

そんな昨今「モノづくりから、コトづくりへ」と言われ始めています。
「コトづくり」とは、モノ=製品だけではなく、コト=体験、ユーザーエクスペリエンスを一緒に提供しようと言う考え方です。
例えば、最近、「シャドーIT」と言う言葉があります。それは、今まで社内のコンピューターシステムを面倒を見てきた情報部門の預かり知らぬところで、ユーザーである事業部門が独自にシステムを調達し、運用することを言います。
これは、ネットワークやサーバーの知識がなくても、クラウドにより簡単にシステムの調達と運用ができるためで、むしろ情報部門は、「あれも駄目」「これも駄目」と言う小うるさい存在に思われています。これは、コモディティ化が進んで、専門家の技術や知識的優位が揺らいだ時代を象徴しています。

そんな時代、情報部門はどのようにして自分たちの存在意義を示せば良いのでしょうか。高い技術力を誇っているだけでは存在価値を認めて貰えません。
情報部門が、事業部門のビジネスに資するシステムを構築しようと思えば、まず情報部門は事業部門の目線で考えなくてはなりません。そして、その視点でコミュニケーションを取りながら、事業部門は自分たちの望むべき形を描き、情報部門はその実現のため自分たちのノウハウを活かします。これが提供側と利用側と言う枠を超えたいわゆる「協創」です。
このユーザーの体験を軸にした「モノづくり」こそが「コトづくり」です。
まだ一部のIT業界でしか語られない言葉ですが、これからの時代非常に大切にキーワードとなるでしょう。